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巨人優勝に欠かせなかった投打の“陰のMVP”高梨雄平、増田大輝の存在感とは?

 

“衝撃的”なトレード


シーズン途中に加入した高梨は中継ぎ左腕として真価を発揮した


 7月14日。日本球界、とりわけセ・リーグ関係者の中では、その発表に驚きの声が挙がった。巨人高田萌生と、楽天高梨雄平のトレードが発表されたからだ。「“やられた”と思った」とはある球団関係者。それほどまでに衝撃的なものであった。

 楽天が放出した高梨は、言うなれば「ハイスペック」だった。侍ジャパン入りもし、2018年には70試合に登板するなど経験が豊富。そして、どのチームもノドから手が出るほど欲しがる左のリリーバー。さらに28歳。野球選手として最も脂が乗っている全盛期であった。当時の巨人はクローザーのR.デラロサが左ワキ腹肉離れで離脱中。一軍の左の中継ぎに目を向けると、勝利の方程式を担うのは中川皓太高木京介、そして藤岡貴裕という布陣だった。高木は開幕から登板過多になっており、藤岡は勝利の方程式には届かず。そんな中、白羽の矢が立ったのが高梨だった。

 別の他球団関係者は「高梨を狙っている球団は多かった。そこに高田を出せるのが巨人の強みじゃないかな」と嘆いた。高梨の交換要員として巨人が放出した高田は最速154キロの直球を主体とした本格派右腕。創志学園高時代に「松坂大輔2世」と称され、将来を有望視された。入団後は一軍登板3試合と少なかったが、今後の伸びしろが期待できる投手の1人だった。

 巨人の大塚淳弘球団副代表は、いわゆる「飼い殺し」を否定し、たとえ将来性豊かな選手でも求める球団があり、交換要員などの思惑が合致すれば交渉に応じる姿勢を示す。高田を出し、高梨を獲得した際には「(通算)防御率1点台。奪三振率も高い。右打者も抑えているし、もってこいと思う」と迷わなかった。

 加入後、高梨は優勝まで41試合に登板し1勝1敗、防御率1.57と思惑どおりの数字を残した。シーズン中盤には高木がコンディション不良で離脱し、中川も左ワキ腹痛で10月上旬にリハビリ組へ合流した。それでもブルペン陣が揺らぐことはなかった。それもこれも「高梨がいたから」といっても過言ではない。途中加入ながら、その存在は主力級に際立っていた。

“攻”“走”、そして“投”で貢献


ケガで終盤に離脱したが、それまで計り知れない貢献度を示した増田


 衝撃のトレードから約3週間後の8月6日。今度は甲子園が騒がしかった。阪神に0対11と大敗していた8回一死。原辰徳監督は、マウンドに内野手登録の増田大輝を送った。巨人の野手登録選手がマウンドに上がるのは、2リーグ分立後、初めて。指揮官は「(8回からマウンドに上がり、7失点の)堀岡隼人を投げさせることのほうが(相手に対して)はるかに失礼」と理由を語った。

 増田大は1四球を与えたが、打者2人を抑えた無失点に抑えた。伝統の一戦で敵地をざわつかせた増田大だが、今年は打っても、走っても成長の証を見せた。5年目で初の開幕一軍をつかむと、主に代走や代打で出番を増やしていった。疲れがたまる8月には、15試合出場で打率.429と好数字を維持。決して数の多くない機会で結果を残し続けた。

 昨年に比べ、打率は約5分上がり、出塁率は約1割も上昇。盗塁数も増加した。内野も外野も守れ、投手までできる。足も含め、守りと走塁にはスランプがない。チームに一人、こんな選手がいたらと思わせる「ユーティリティープレーヤー」と位置づけられる。

 今季の増田大は、10月13日に右ヒザ痛で登録抹消されるまで(25日に再登録)、開幕から一軍で戦い続けてきた。それこそが、必要とされる選手に成長した何よりの証明だ。

写真=BBM
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