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ベースボールゼミナール

経験のないライトをうまく守るには?/元西武・平野謙に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.小学6年生です。今までセンターをしていたんですが、コーチから今度からライトを守れ、と言われました。経験がないので、どう守っていいのか、迷っています。(神奈川県・12歳)



A.軸守備位置は最初はセオリーどおりでいいと思います。余裕が出てから自分の考えで動かしてみては?

西武時代の平野氏。強肩、堅守の右翼手として名を馳せた


 昔は、ライトは一番打球が飛んでこないポジションと言われ、ライパチ(ライトで八番)という言葉もあったくらいです。もちろん今は違います。イチロー(元マリナーズほか)が守り、強肩で“レーザービーム”とも言われたことは、質問の方もご存じと思います。

 私自身も中日でセンターをした後、西武でライトに変わりました。最初に思ったのが、「考えることがたくさんあるな」です。センターは守備範囲が広く、深いところに行けば、ホームまでの距離があります。足や肩が非常に大切なポジションですが、ある意味では、来た球をしっかり捕って、それをきちんとしたスローイングで各ベース上の野手かカットマンに返せばいい、というシンプルなところがあります。

 一方、ライトは少し複雑です。捕ったらタッチアップされ、試合が終わってしまうファウルフライもありますし、足を絡めたエンドランなどは基本的には右方向に打ってきますから、センター以上に瞬時に選択を迫られます。

 あとは打球のクセですね。センターも無回転のボールや難しい打球がたくさん飛んできますが、ライトは切れていったり、センター以上にクセがある打球が多い。小学生ではあまり大きな球場は使わないかもしれませんが、フェンスもセンターより近く感じるはずです。戸惑うことも多いと思います。

 守備位置は、最初はセオリーどおりでいいでしょう。動くとしたらベンチから指示が出たとき。ただ、分からないこと、なぜこの指示が出たのかと疑問に思ったら後でコーチに質問してみてください。

イラスト=横山英史


 試合を重ねると、少しずつ余裕が出てくるはずです。そうなったらセオリーだけではなく、打者を観察し、自分の考えで守備位置を動かしてみてもいいと思います。プロ野球のように何試合も対戦する相手ではありませんから、最初は分からないと思いますが、大柄でクリーンアップなら力があるはずですから少し深く守るとか、小柄で一番打者なら足が速い可能性が高いので、前を守ってみるとか。最初は極端にではなく、少しずつ変えてみてください。

 失敗することもあるでしょうが、試合を重ねながら、前の試合で感じた違いを修正していくことで、いろいろなことが分かってきます。だんだん、相手のバッターのどこを見たらいいかも分かってくると思います。守備で大事なのは“遊び心”です。好きになればなるほど、守備の奥深さが分かるし、楽しくなってくるはずです。

●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2020年10月26日号(10月14日発売)より

写真=BBM
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