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88安打で39本塁打…打率最下位で本塁打王に輝いた「伝説の助っ人」とは

 

驚異の長打力


ヒゲを蓄えた姿も特徴的だったランス


 長距離砲は当てにいかずにフルスイングする分、三振の数も多い。だが、ここまで「三振かホームラン」に振り切った選手は珍しいだろう。元広島のランスだ。

 ランスが来日したのは87年。本名はリチャード・アンソニー・ランセロッティで、本名が長いため登録名をランスにした。前年に現役引退した「ミスター赤ヘル」山本浩二に代わる四番打者として期待されたが、その飛距離は規格外だった。左打席で棒立ちのような打撃フォームから強烈なアッパースイングで打球の大半が右方向に飛んでいく。6月9日の大洋戦(広島市民)から16日のヤクルト戦(神宮)まで6試合連続8本塁打を放つなど打ちだしたら止まらない。一方で不調になるとトンネルからなかなか抜け出せず、三振を繰り返した。悪球打ちでも知られ、つかみどころのない打者でもあった。

 同年は打率.218、39本塁打、83打点。来日1年目で本塁打王を獲得したが、打率は規定打席に到達した選手の中で最下位、114三振もリーグワーストだった。シーズンで88安打を放ったが、45パーセントの39本が本塁打という驚異の長打力だった。3年連続三冠王を狙っていた阪神ランディ・バース、シーズン途中に来日して本塁打を量産したヤクルトのボブ・ホーナーを抑え、タイトルを獲得したことは大きな価値がある。OPS(出塁率と長打率とを足し合わせた値)も.859とチームへの貢献度は決して低くなかった。

 広島ファンから愛される選手だった。応援歌は来日2年目から元おニャン子クラブ・生稲晃子の『麦わらでダンス』が使われ、「打ちまくれランスランス 確かに三振多いけど 打ちまくれランスランス 当たればホームラン」という歌詞に。日本球界に慣れた2年目の88年はさらなる爆発が期待されたが、阿南準郎監督に「アッパースイングを直す気がなかったら使えん」と指摘され、「打率を上げる努力はするが、フォームを変えるつもりはまったくない」と反発して不穏な空気に。信頼されていないことに腹を立ててチームに悪影響を及ぼしてしまう。代打を送られると風呂に入って帰宅、スタメンを外された試合はベンチでマンガを読むなど、「問題行動」が話題に。仲が良かったランディ・ジョンソンが8月に退団すると、孤独が深まった。シーズン終了を待たず、9月に退団した。79試合出場で打率.189、19本塁打。50安打中19本塁打と長打率は相変わらず高かった。

豪快なスイングで本塁打を量産した


 帰国後の89年はレッドソックスと契約し、90年にメジャー再昇格。91年は限りで現役引退した。粗削りで「三振かホームラン」のプレースタイルは計算ができなかったが、本塁打を量産する度に「ついに覚醒か」と大きなロマンを抱かせた。日本でプレーした期間は2年弱だったが、30年経った現在も語り継がれる助っ人外国人だ。

写真=BBM
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