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西武黄金時代、日本シリーズで起死回生の同点弾を放った石毛に犠打を要求した森監督

 

1988年の日本シリーズでMVPに輝いた西武・石毛


 西武黄金時代のリーダー・石毛宏典が日本シリーズで脳裏に焼き付いている打席がある。1988年、中日との日本シリーズ。3勝1敗と西武が王手をかけて迎えた第5戦(西武球場)のことだ。まず5対6と西武が1点ビハインドの9回裏、打席の石毛は郭源治の甘く入った直球を見逃さずにバックスクリーンへたたき込んだ。6対6の同点。試合は土壇場で振出しに戻った。

 試合は延長に入り、11回裏。先頭の清原和博が中前打で出塁し、再び打席に石毛が入った。マウンド上では郭が続投。この場面、森祗晶監督が出したサインは送りバントだった。きっちりと石毛が仕事を果たし、続く立花義家が三振に倒れた後、伊東勤がサヨナラ打を放って西武が3連覇を成し遂げた。

「これは当たり前の作戦です。いくら結果を残していても、いくら五番であろうとも、こういった状況で送りバントの作戦を取るのが森野球なんですよ。私にとっても違和感はまったくなかったですし、それはもちろん、チームメートも同様でしょう」

 このシリーズでMVPを獲得するほど活躍した石毛。しかし、サヨナラ勝利で日本一のお膳立てとなる送りバントを森監督が求めてきたことに、まったく違和感は覚えなかったという。日本一のための自己犠牲の精神。それは黄金時代の西武ナインに、しっかりと浸透していた。勝てる確率を高めることだけを考えていた森監督のさい配と、その精神が見事に相乗効果を生み出して西武は頂点に立ち続けたのだろう。

 今週末からポストシーズンが始まる。短期決戦を勝ち抜いて、日本一に立つチームはどのような野球を見せてくれるだろうか。

文=小林光男 写真=BBM
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