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【MLB】レイズをけん引する、キューバ出身の新しいスター、アロザリーナ

 

25歳の若き長距離砲アロザリーナがレイズの快進撃をけん引している。地区シリーズではヤンキースの田中からも豪快な一発を放った


 2019年、ア・リーグ地区シリーズでアストロズに敗れたレイズにとって、20年に向けての補強ポイントは打者だった。そこで筒香嘉智、ハンター・レンフロー、ホセ・マルチネスら多めに獲得したが、期待に応え、今、チームを背負っているのが、ニュースとしては小さかった25歳のランディ・アロザリーナ外野手だ。

 新型コロナウイルスの感染で、レイズ・デビューは8月30日と遅れたが、その後23試合で打率.281、7本塁打、11打点、OPSは1.022。プレーオフになるとさらなる大活躍で、10試合(現地時間10月13日終了時点)で39打数18安打、4本塁打、3二塁打、3四球、5打点、11得点。打率.461、OPSは1.385であった。

 現在、メジャーの投手は高めの真っすぐと、低めのストライクになる変化球を軸に攻めてくるが、アロザリーナは高め真っすぐが得意だ。4本のホームランのうち3本はそのコースをとらえたもの。そこで、相手投手は真っすぐを減らすようになったが、次は縦に割れるカーブを捉える。体は180センチ、83キロで大きくはないほうだ。しかしバットが出るのが素早く、バットスピードも速い。プラス、以前より体を起こして立ち、手の位置を高くすることで、高めのボールをうまくたたけるようになったそうだ。

 彼の活躍を見て嘆いているのはカージナルスファンだろう。今年1月にトレードしたが、レイズが元一巡で投手のトッププロスペクト、マシュー・リベラトーレと交換したというので話題になった。カージナルスは若い外野手が余り気味だったから、出してもいいと判断した。メジャーでの実績は19年の23打席のみ。6安打1本塁打だった。

 当時カージナルスのジョン・モゼリアック編成本部長は「投手のトッププロスペクトを加えた上に、若いほかの外野手にプレー機会を与えられる」とご満悦だったが、今は心底がっかりしているだろう。一方で、レイズのスカウト陣はこの才能を見抜いていたのだからさすがだ。

 キューバのハバナ出身、子どものころはサッカーに熱心だったそうだ。野球ではユリ・グリエルのファンで、「彼にあこがれていた。走れるし、打てるし、投げられる。何でもできる。アグレッシブなスイングも好きだった」と言う。15歳で父を亡くし、野球で成功し家族を支えようと19歳のときに小型ボートで出国した。

 15年はメキシコのプロリーグでプレーし、16年カージナルスと125万ドルの契約金でサインした。19年8月にメジャー・デビュー、1年前のポストシーズンもアクティブロースターに入り代打出場したが、5打席で4打数0安打とヒットはなかった。一方で彼の名前はニュースになった。ブレーブスを破ったあと、クラブハウスでマイク・シールド監督が士気を高めるために「4文字言葉」連発のスピーチを行ったのだが、その模様をスマホで撮影しインスタグラムに載せてしまった。

 怒られたのは言うまでもない。それがトレードの理由であれば、カージナルスはとんだ失敗をしてしまったのである。ちなみに交換相手のリベラトーレは今季マイナーのシーズンがなかったため、成長ぶりを見られなかった。カージナルスのファンはリベラトーレが将来大物になってくれることを祈るしかないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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