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「史上最低の助っ人」酷評も…松井秀喜を抑えて本塁打王に輝いた人気者は

 

野村監督がボヤキ連発


陽気な選手だったホージー


 外国人選手の下馬評ほど当てにならないものはない。現役バリバリのメジャー・リーガーが期待外れの成績に終わり、無名の外国人が日本で球史に残る成績を残したケースは少なくない。だが、この男ほど前評判とシーズンの活躍のギャップが大きかった外国人はいないだろう。松井秀喜(元巨人)とのタイトル争いを制し、本塁打王に輝いたヤクルトドゥエイン・ホージーだ。

 ホージーはメジャー通算52試合で打率.274、4本塁打、12盗塁をマーク。前年限りで退団したトーマス・オマリーヘンスリー・ミューレンに代わる強肩強打の助っ人として期待されて1997年ヤクルトへ。だが、キャンプが始まると落胆の声が。外野の守備ではスローイングに難があり、ボールの握り方をコーチに教わるほどだった。打撃練習でもアッパースイングでポップフライを連発。野村克也監督は「肩は弱いし、打撃もお寒い。5000万円で代走要員の外国人取ってきてしまったわ」、「誰や、こんな使いものにならん選手を獲ってきたんは。ワシは四番が欲しかったんや」とボヤきが止まらなかった。

 オープン戦でも快音は聞かれず、メディアから「史上最低の助っ人」と揶揄されるほどだったが、シーズンに入ると別人のように覚醒する。開幕2戦目の巨人戦(東京ドーム)で宮本和知から来日初安打初本塁打を放つと、その後もコンスタントに打ち続けて5月末から三番に定着。6月は打率.345、8本塁打で月間MVP受賞した。球宴にも初選出され、第2戦では2安打1打点2盗塁とダイヤモンドを駆け回り、優秀選手賞に選ばれた。

ファンからもらったプリクラをヘルメットに貼り付けた


 実力はもちろん、明るいキャラクターで全国区の人気に。チーム内の呼び名はホージーが大ファンの横綱・曙太郎からとって「タロー」。練習中は流れてくる音楽に乗って腰をフリフリ。「タケヤー! サオダケー!」と場違いな掛け声で盛り上げる。ナインにも愛された。古田敦也高津臣吾に「こいつアホだよ」と言われると「お前がアボ(アホ)」と言い返す。ボールかごのカートに乗り高津に運ばれた際は、「千駄谷小学校までお願いします」とコメントして爆笑を誘った。

 ホージーの個性は少年時代に色濃く影響されている。札付きの不良だったが、聖書に出会ったことで意識が変わったと言う。ファンからもらったプリクラをベッタリ貼り付けたド派手なヘルメットが話題になり、サインにも常に笑顔で対応し、覚えたての日本語で話しかけるなどファンを大切にした。

努力を重ねてホームランキングへ


日本一の祝勝会では侍に扮してプールに飛び込んだ


 おちゃらけた姿がフォーカスされたが、誰よりも努力家だった。プライドをかなぐり捨て、若松勉打撃コーチとともにアッパースイングの矯正に取り組み、野村監督のミーティングにも積極的に参加。コーチ陣は質問攻めにあったという。また、オープン戦からベンチにノートを持参し、対戦した投手のクセや球種などをメモした「ホージーノート」を作成。細かく分析したメモでシーズン中は2冊にも及んだ。野村監督も「研究熱心さは買えるな。2度続けて空振りしても、3度目は当てよる」と見直していた。

 神宮球場で試合がある日は、主力選手の中では一番早く球場に現れ、入念に打ち込む。努力はウソをつかない。8月は月間打率.294、11本塁打で2度目の月間MVPに選出されるなど後半戦も打ち続けた。ホージーが「メジャーで通用する」と一目置く巨人・松井とのデッドヒートを制し、38本塁打で本塁打王を獲得した。137試合出場で打率.289、38本塁打、100打点、20盗塁。申し分ない活躍でリーグ優勝に貢献し、西武との日本シリーズも4勝1敗で制する。第2戦の6回一死満塁でホージーの止めたバットのグリップエンドにボールが当たる幸運な内野安打は、シリーズ史に残る珍プレーとして語り継がれている。日本一の祝勝会では侍に扮し、満面の笑みでプールに飛び込んだ。

 ホージーは頭脳明晰だった。週刊ベースボールのインタビューで自身の立ち振る舞いについて、「うん、それがボクなんだよ。プレーするときは一生懸命プレーをするし、ふざけるときはふざける。ビジネスとプライベートを使い分けているとも言えるかな」と語っている。オフの契約更改では年俸5000万円から1億3000万円と大幅アップ。しかし、栄光は続かなかった。来日2年目の98年は左肩亜脱きゅうや両ヒザ痛など故障に悩まされ、相手球団の厳しいマークにもあって107試合出場、打率.233、13本塁打、42打点、4盗塁と精彩を欠き、同年限りで退団した。

 わずか2年間の在籍だったが、チームに与えた影響は計り知れない。底抜けに明るく、試合では頼もしい。ホージーは日本を愛し、日本に愛された助っ人だった。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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