まさに孤軍奮闘の活躍だった。
開幕からチームが下位に沈む中で三、四番を担う主軸として打線を鼓舞し続けたのがオリックス・吉田正尚だ。豪快なスイングで右方向への強烈な打球を放つだけでなく、外角球に対しては華麗に流し打ち、8月11日から9月6日まで24試合連続安打をマークするなど、好調を維持した。
“剛”と”柔”を兼ねる巧みなバットコントロール。全120試合に出場し、無安打は、34試合と、打率.350のハイアベレージを残して初のタイトルに輝いた。それでも、「そこそこ」「まだまだ」が口をつくから恐れ入る。
「納得できかった打席もあるし、打たされてゴロの打球も多かった。それに、長打も少ない。本塁打や打点など、ほかの成績を見れば、上には上がいますから」
あくなき向上心。ゆえの探求心が好成績の要因だ。
「自分の中で考えて打席に立つ。だからしっかりボールを仕留められる」とベンチやネクスト・サークルからの準備も欠かさず。「例えば、決め球が何だったのか、など。そういう配球を見て、じゃあ僕の打席で、どんな攻め方をしてくるのか考えているんです」と狙いを定めた成果が表れたのが.395をマークした初球打率だった。
その一方「長くボールを見るためにも追い込まれたら逆(左)方向を意識する」と、2ストライク時も打率3割超を記録。規定打席到達者で最小の29三振と、入団時から口にする「幅のある打撃をしていきたい」は意識と数字が物語る。
それでも目指すものは常に先にある。
「すべてのタイトル争いに加わる」と、究極の目標は“全冠”だ。
初の首位打者獲得も、慢心の2文字はない。
写真=BBM