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【MLB】大荒れ必至、FA選手で溢れるオフのMLB市場

 

コロナ禍の中で、無観客でシーズンを行ったためオーナー陣は大打撃? 契約も難航している。大型契約はロビー・レイが勝ち取っただけだ


 新型コロナの影響で60試合の短縮シーズンとなったMLB。だが大変なのはむしろこれからかもしれない。無観客でシーズンを行ったため大幅な収益減で、多くのチームが「補強の話をする前に、来季のサラリー総額を削る作業から入らないと」と主張する。

 ワールド・シリーズ終了から5日後、11月1日からFA選手が他球団とサインできるようになったが、巨額の契約で決まったのは左腕ロビー・レイが在籍していたブルージェイズと1年800万ドルで合意した件のみ。11月1日、残留オファーで1年1890万ドルのクォリファイングオファーが6人の選手に出されたが、この数も12年に制度が始まって以来最少。ちなみに15年の20人が最多だった。

 さらにレイズがチャーリー・モートン投手に1500万ドル、カージナルスがコルテン・ワング二塁手に1250万ドル、インディアンズがブラッド・ハンド投手に1000万ドルなど21年の契約について球団が選択権を持っていたが、この3人を筆頭にコーリー・クルーバー、ライアン・ブラウンなど約40人がオプションを拒否されFAとなった。来季もチームに残れるのはカブスのアンソニー・リゾなど9人だけだ。

 ワールド・シリーズ中、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは「オーナーたちは大変な負債を抱えている」と話していた。実際カブスなど、100人を越える球団職員を解雇している。とはいえ、新型コロナでシーズンが始まらなかった4月から6月、労使の再開の話し合いがまったく進まなかったように、選手や代理人は球団が本当にお金がないのかどうかで、機構側の説明を疑ってかかっている。実際、アメリカの実体経済は良くないかもしれないが、オーナーのような超富裕層は株で大儲けしているからだ。

 とはいえ来季、予定通りにシーズンを始められるかどうかはまったく分からず、スタンドに観客を入れられるかどうかも不明。オーナーたちは莫大な放映権料にもかかわらず、無観客で試合をすると赤字が増えるだけと主張しており、試合数を減らすかもしれない。さらに20年にキャンセルされたマイナーのシーズンはどうなるのか。1年間試合ができなかった若い選手たちはどうすればいいのか。育成担当のコーチたちは仕事があるのか。

 12月2日は球団がメジャーの若手選手に、契約を出すかどうかの意思表示をする(テンダーする)期限だが、記録的な数の選手がノンテンダーFAになるとも予測されている。FA選手の数は推定で全300人。仕事を探す選手で溢れ返る。

 その上、さらにややこしいのは現行の労使協定が21年シーズンの終了後に失効になること。来年は新協定の話し合いを進めていかねばならないが、労使間は不信感のみと最悪の状態でうまく進むとは思えない。機構側はオーナーから、選手会執行部は選手や代理人からプレッシャーをかけられる。おいそれとは妥協できない。

 唯一の明るいニュースは、1兆4000億ドルの資産を持つ大富豪スティーブ・コーエン氏がメッツの新オーナーとなり、東のドジャースを目指すと大規模な投資を考えていること。常にヤンキースの後塵を拝してきたが、負の歴史にピリオドを打つのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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