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NPBで史上初の打率4割達成していた? 史上最強の「助っ人外国人」とは

 

王貞治監督への感謝


安打を稼ぎ、長打力もあるスラッガーだったクロマティ


 NPBの歴代最高打率は元阪神のランディー・バースが1986年にマークした打率.389。前人未到の7年連続首位打者を達成したイチローは2000年に歴代2位の打率.387を達成している。多くの天才打者でも超えられなかった「打率4割」。その大記録に最も近づいたのが元巨人のウォーレン・クロマティだった。

 クロマティは現役バリバリのメジャー・リーガーだった。エクスポズでは24歳のときにレギュラーをつかみ、77年は155試合出場で打率.282、5本塁打、10盗塁をマーク。同年から4年連続170安打以上放つなどヒットメーカーとして活躍した。メジャー通算1063安打の実績を引っさげ、31歳シーズンの84年に巨人に入団する。

 安打製造機の看板に偽りはなかった。広角に打ち分けるシュアな打撃で勝負強い。NPBの7シーズンで4度3割をマークしたが、来日1年目から3年連続30本塁打以上放つなど長打力も脅威だった。86年には打率.363、37本塁打、98打点をマーク。だが、阪神のバースが日本記録の打率.389、47本塁打、109打点で三冠王に輝いた。シーズン打率が.360以上を記録した選手の中で首位打者になれなかったのはこの年のクロマティだけだった。

 クロマティは今年7月に週刊ベースボールの取材で、王貞治監督への感謝を口にしている。「僕の日本での成功は、オーさん抜きでは語れません。オーさんとは88年まで一緒でしたが、とにかくお世話になりました。僕の2人目の子どもには『コーディー・オー・クロマティ』と名前を付けたほど尊敬しています。いまでも家族ぐるみのお付き合いをさせていただいていますが、1年目から35本の本塁打を打てて、2年目から続けて3割を打てたのもオーさんのアドバイスのおかげ」

 89年は打率にこだわった。開幕から4割を超える打率をキープし、5月18日の時点で打率.470まで上げる。6月25日の58試合目で.396となったが、8月9日に再び超え、8月20日まで打率.401。96試合目までの打率4割台は64年の南海・広瀬叔功の89試合を抜く日本記録だが、クロマティはこの時点ですでに規定打席をクリアしていた。巨人はリーグ優勝に向けて独走態勢に入っていたため、この時点で4割を達成できた。

 だが、クロマティは休まなかった。「規定打席に到達した時点で4割を超えていたわけだから、みんなに『もう、試合に出ないほうがいい』と言われたことはよく覚えています。もしこれが残り10試合だったら、僕もそうしていたと思うけど、シーズンは続いていましたからね」と振り返る。シーズン終盤に失速したが124試合出場で球団史上最高打率.378をマーク。首位打者に加え、最高出塁率(.449)のタイトルを獲得した。同年に20勝を挙げたチームメートの斎藤雅樹を抑えてMVPも受賞した。

ファンに愛された明るいキャラクター


87年、リーグ優勝時のビールかけ。チームを盛り上げるムードメーカーでもあった


 クロマティが巨人ファンのみならず、野球ファンに愛されたのは明るいキャラクターも大きかった。チームに貢献する殊勲打を放った守備に就く際、外野席の巨人ファンとともに万歳三唱するパフォーマンスを披露。日本語でチームメートに話しかけて仲良くなるなどすっかりチームに溶け込んだ。闘志も熱かった。広島と熾烈な優勝争いを繰り広げた86年10月2日のヤクルト戦(神宮球場)。高野光から頭部に死球を受けて倒れて病院に運ばれた。患部の状態を配慮して登録抹消の可能性がメディアで報じられたが、なんと翌日のヤクルト戦でベンチ入りを志願。尾花高夫から代打満塁ホームランを放ち、王貞治監督と泣きながら抱き合った。

 日本で7年間プレーし、通算779試合出場で打率.321、171本塁打、558打点。現役引退後はプロレスラーとしてデビューして注目を集めた。19年から巨人・原辰徳監督の要請で「臨時打撃コーチ」に準ずる役割で選手たちに打撃指導を行い、今年から正式にアドバイザーとして契約を結んだ。

 また、今年6月にはYouTubeチャンネル「クロマティチャンネル」を開設。恩師の王貞治ソフトバンク会長、現役時代にチームメートだった中畑清篠塚和典ガリクソン槙原寛己のほか、対戦した元西武秋山幸二デストラーデ、元近鉄のブライアント、元広島の高橋慶彦など豪華な顔ぶれがゲストで動画に出演している。乱闘騒ぎを繰り広げた元中日宮下昌己も登場。クロマティは抜群の記憶力で現役時代を振り返りながら、日本語で笑顔の絶えないトークを繰り広げている。18年4月に亡くなった元広島・衣笠祥雄氏の思い出を話した際は感極まって涙を流す場面も。日本プロ野球の発展に大きく寄与した「史上最強助っ人」だ。

写真=BBM
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