一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 開幕から4連敗
今回は『1972年5月1日号』。定価は100円。
雨で試合中止が相次いだ1972年の序盤戦。
阪神は開幕から対
中日、対
巨人のいずれも2連戦で4連敗を喫した。
前々回、紹介したように、対中日の開幕2試合目、リリーフ登板した阪神・
江夏豊がバートにサヨナラ満塁弾を食らっているが、その記事中、中日・
与那嶺要監督が試合前から「江夏は必ず出てくる」と言っていた個所があった。
次の巨人戦にそなえ、エース・江夏を開幕戦で温存したことへの怒りから「なんとか引きずり出そう」という意地の言葉かと思ったが、加えて、どうやら江夏は中日戦の前から、「あと5つの1500奪三振は中日戦では3つだけにし、残り2つは巨人戦でONから奪う」と公言していたらしい。これが「傲慢だ」と与那嶺監督、中日ナインをカッカさせていたようだ。
実際、江夏は、この試合は3三振のみ。12日の巨人戦で先発し、1500奪三振を達成したが、試合は敗れている。
さらに雨で流れた前日11日の試合前に阪神が醜態をさらす。
鎌田実と
カークランドのつかみ合いのケンカだ。これは鎌田コーチ補佐が打撃練習をしている際、
「ヘイ、ユーはコーチなんだから打撃練習はいらんだろ」
とカークランドがからかったのがきっかけだった。
これまでも何度も言っていたジョークらしいが、このときはなぜか鎌田が激怒し、カークランドにつかみかかった。
さらに13日の試合では、兼任監督の
村山実が4回をピシャリと抑えながら、5回の攻撃時、代打交代。後続がつかまっての敗戦となった。巨人打線は村山にタイミングがあっていなかっただけに「交代が早過ぎたのでは」とネット裏がざわめいた。
この問題がにぎやかになったのは、村山が自身の登板日の采配を
金田正泰ヘッドに任せていたこともある。実際、この試合でもプライド高き村山が自分からこんな中途半端なタイミングでマウンドを降りるとは思えない。
推測だが、故障持ちの村山を気遣い、金田コーチが「監督、どうしますか。代打にしましょうか」と言い、村山も任せた以上、仕方ないと「うん」となったのではないか。
球団から「村山にはより投手に比重を置き、投げまくってほしい」と言われ、サポート役として就任したのが金田コーチだった。
このときは村山監督、金田コーチ、互いに気を使ったことが裏目に出たような気がする。
戸沢球団代表は、
「なんらかの形で、気分一新の手段に出るかもわからない」
と話したが、もともと“腹案”があったことを感じさせる言葉でもある。
また、周囲からは、
「タイガースの選手は情けない。三振して笑っている。絶好球を見逃して平然としている」
と批判があった。
4連敗とこの指摘は、今回の日本シリーズの巨人と重なる。
実際には戦力が落ちているにもかかわらず、プライドばかりが高い、ということか。
では、またあした。
<次回に続く>