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プレートの一塁側を踏む場合と三塁側を踏む場合に、それぞれどんなメリットが?【後編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.2020年の巨人と阪神の開幕戦(東京ドーム)のことです。巨人先発の菅野智之選手はプレートの左端(三塁側)を踏んで投げ、一方の阪神先発の西勇輝選手は真逆の右端(一塁側)を踏んで投げていました。それぞれどんなメリットがあるのでしょうか。(神奈川県・28歳)



A.現在の球界はツーシーム全盛の時代で、このボールを生かすには一塁側が何かと便利

2015年、ヤンキースから広島に復帰した黒田はプレートの一塁側を踏んで投げるようになった


 後編です。今回はプレートを踏む位置の近年の主流が三塁側ではなく、一塁側になってきている件(※あくまでも右ピッチャーについての話です)について解説していこうと思います。

 ヤンキースから2015年に広島に復帰し、2シーズンプレーして引退した黒田博樹もプレートの一塁側を踏むタイプの選手で、これが日本でのトレンドを生む1つのきっかけと言えるかもしれません。MLB移籍前は三塁側のタイプだったと記憶していますが、メジャーに移籍し、徐々に一塁側に変えていった選手でしょう。

 一塁側を踏む選手が増えてきた理由の1つに、三塁側を踏んで右バッターと対する場合に、アウトコースの投げ損ないがストライクゾーン、しかも甘いコースに入ってしまう可能性が高いことも挙げられます。仮に、前号でも紹介した巨人菅野智之選手くらいの制球力、キレがあれば問題はないのでしょうが、やはり、角度をつけて一番遠いアウトローにピンポイントで制球するのは技術が必要で、決まれば威力抜群ですが、果たしてそのリスクをどう考えるのか。

イラスト=横山英史


 また、現在はツーシーム全盛の時代です。阪神の西勇輝選手の、右バッターのインコースをえぐるツーシームの使い方については前編で解説しました。これとは異なり、黒田選手も操った右バッターの外ボールゾーンからアウトコースいっぱいに戻しながら決めていくツーシーム、つまりバックドアが一塁側を踏むと威力を発揮します。松坂大輔選手(西武)は三塁側を踏んで外から戻してきていましたが、ちょっと現実的ではなく(私も試しました)、一塁側を踏んでのバックドアがやはり投げやすい。MLBではボールの関係か、ツーシーム系が動くので一塁側全盛ですが、日本でも主流になりつつあります。

 対左の場合はスライダーを外から曲げてアウトコースいっぱいに決めるバックドアが使えます。利き手側から曲げていくことができるので、これは遠い一塁側を踏んでいても難しくありません。前編では一塁側を踏むと、すべての球種がストライクゾーンから散っていくと解説しましたが、対左のバックドアは、ゾーンからスタートし、一度外れて、またゾーンに入ってくる軌道で、嫌がるバッターは多いようです。慣れもあるのですが、こういう事情もあって、一塁側が好まれることが多いのではないでしょうか。

<「完」>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年11月30日号(11月18日発売)より

写真=BBM
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