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東都大学四部リーグ「優勝決定戦」が神宮で行われた理由とは

 

最後に最高のステージが用意


12月9日。東都大学四部リーグの「優勝決定戦」を最後に、2020年秋のシーズンは幕を閉じた。写真は四部優勝で三部に自動昇格した一橋大


 12月9日。2020年秋、神宮での最後のゲームが終わった。東都大学四部リーグ。一橋大が2勝1敗同士の対戦となった東京都市大との「優勝決定戦」を6対0で制して、四部優勝。今秋は入れ替え戦が行われないため、一橋大が18年春以来の三部への自動昇格を決めた。

「野球ができて、良かったです!」

 東都大学野球連盟・瀬尾健太郎事務局長は感慨深い表情で語った。

「四部がいつできるのか? それが、懸案事項でした。10月末まで対外試合禁止、課外活動自粛が続いており、ようやく11月から開催できそうなメドが立ちました。ところが、そこで、問題に上がったのが使用球場でした」

 通常、一橋大グラウンドが四部のメーン会場であったが、新型コロナウイルスの感染防止対策により、使用できなかった。4年生に最後の舞台を提供するため、公営球場など(大田、相模原、等々力、府中市民、青学大グラウンド)が手配された。

 3校(東京都市大、一橋大、東京工大)による2試合総当たりの計4試合。一橋大と東京都市大の最終戦は当初、他の球場で予定されていた。だが、2勝1敗で両校が並んだことにより、連盟幹部の尽力と神宮球場の理解もあって、最後に最高のステージが用意された。

「12月にリーグ戦を開催することも初めてですし、四部を神宮で行うのも初めてです。今日でようやくひと段落です」(瀬尾事務局長)

 例年、四部校は四部優勝をした上で、三部最下位との入れ替え戦でしか、神宮でプレーすることができない。

 一橋大・阿部誠也主将(4年・大分上野丘高)は言う。

「入れ替え戦がない、と聞いた時点で、非常に残念だなと思っていたところで、先週水曜に神宮で試合ができるという話となり、本当にうれしかったです。2年春には入れ替え戦(対芝浦工大)で敗退して四部降格。2年秋、3年春は三部昇格ならず、悔しい思いをした特別な神宮。4年生の代としては悔いなく、最終戦を終えることができて良かったです」

 一方、一番・遊撃で出場した東京都市大の山中惇矢監督兼内野手(3年・一宮興道高)は無念を語った。

「こんなに素晴らしい球場で感謝の思いしかありませんが、力の差が出てしまった。残念です。4年生は達成感ある表情をしていましたが、自分としては力を出し切れず、悔しい」

来春の試合運営は……


 東京都市大は9月8日に活動自粛が解禁したのも束の間、9月下旬からは再び制限が入った。大会参加を控えた部に限り、週1回(水曜日)の活動が認められていた。11月上旬にオープン戦1試合のみを消化して開幕という、ほぼぶっつけ本番。11月18日のリーグ戦開幕後も、全体練習はままならず、自主練習でカバー。準備不足は否めなかったが、最大限の準備で試合に臨んだ。この日の一橋大2回戦を終えると、再び、活動休止に入る。「当分できないと思います。来春のリーグ戦が開催されることが決まった時点で、連盟さんにお願いして大学に連絡していただく。そこで大学の判断となります」(山中監督兼内野手)

 同大学野球部では例年、3年生が幹部を務め、4年生は就職活動が優先。就職内定後にチームに戻るというスタイルだが、山中監督兼内野手は大学院進学を目指しており、来春も選手専任として三部復帰を目指していくという。

 優勝盃授与式が終わると、本塁ベース付近で集合写真。センターのスコアボードに、こんなメッセージが映し出された。

「4年生の皆さんへ

今年も感動をありがとう。
今シーズンは、誰もが記憶に残る一年となりました。
ソーシャルディタンスにより、物理的な距離は生まれましたが、球場関係者や連盟関係者は、一つとなって公式戦を開催しました。
4年生の皆さんには、
これから歩む新たなステージでのご活躍を祈念しております。

東都大学野球連盟・明治神宮野球場」

 一部から四部までが東都であり、加盟全21校の絆を感じた。今春は戦後初となる75年ぶりの中止。そして、すべてが「超異例」だった2020年秋が終わった。

 この日、夕方からの同連盟理事会で来春の試合運営が協議。一部7校、二部6校、三部6校、四部2校という変則形式で行われる。一部は2回戦総当たりの勝率制(各校12試合)。入れ替え戦は例年、上部最下位校と下部優勝校が対戦するが、来春は一部6、7位校と二部優勝校の3校による1試合総当たり制で、1位校が昇格する方針を固めた。二部三部、三部四部の入れ替え戦も同様に実施。来秋には従来の一部6校、二部6校、三部6校、四部3校の運営形態に戻したい構えだ。1日でも早く新型コロナウイルスが終息し、通常どおりの春が開幕することを願うばかりである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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