「18」を背負う右腕
4年連続日本一に輝いたソフトバンクのストロングポイントは投手陣だ。先発は
千賀滉大、
石川柊太、
東浜巨、
ムーア、
和田毅……日本シリーズで先発機会がなかったが、
二保旭、
笠谷俊介、
大竹耕太郎も控えている。他球団がうらやむ陣容で、「先発投手だけで2球団作れる」と言われるほどだ。
この中でかつて、先発の中心だった右腕が苦しんでいる。
武田翔太だ。昨オフに受けた右ヒジのクリーニング手術から復帰し、8月28日の
日本ハム戦(PayPayドーム)で今季初登板初勝利をマークするなど3試合登板で2勝0敗。本来の輝きを取り戻すかに見えたが、9月23日の
オリックス戦(PayPayドーム)で5四死球と制球に苦しみ、3回6失点の乱調。9月30日の
楽天戦(楽天生命パーク)も自己最短タイの1回0/3を投げて7失点で2試合連続KOを喫した。その後は救援で2試合登板したが、クライマックスシリーズ、日本シリーズでは登板機会がなかった。
今季は7試合登板で2勝2敗、防御率6.48。だが、セ・リーグのあるスコアラーはその力を高く評価する。「ソフトバンクでなければ、先発のローテーションの中心になれる存在。3、4番手でなくエースになれる力を持っている。まだ27歳と若いし、これからが全盛期の投手ですよ」。
その力は誰もが認めるところだ。高卒ルーキーの12年に8勝1敗、防御率1.07をマーク。結果もさることながら、ピンチの場面でもマウンド上で笑顔を絶やさない強心臓ぶりが話題になった。15年に13勝、16年もチーム最多の183回を投げて自己最多の14勝とエースへの階段を順調に駆け上がり、18年から背番号は「30」からエースナンバーの「18」に。だが、18年は4勝、19年は5勝、今年は2勝と伸び悩む。好不調の波が激しく、昨季は右ヒジの違和感を訴えて戦線離脱するなど万全の状態には程遠い。
前出のスコアラーは「昨オフに右ヒジを手術してまだ体がなじんでいないのかもしれない。自信がなさそうに投げているのが気になる。ソフトバンクの強力投手陣の中だとチャンスがそう何度もあるわけでないが、持っている球の質は間違いなく一級品。もったいないね」と分析する。
常時145キロの直球に、代名詞の縦に大きく割れるドロップカーブ、縦と横の2種類のスライダーを軸にした投球スタイル。近年は制球難で崩れるケースが目立つが、もともと制球力が悪い投手ではなく、精神的な部分も一因かもしれない。ソフトバンクのエースナンバー「18」は過去につけてきた選手も大きな期待をされながら結果を残せなかったケースが多い。武田はこの不吉なジンクスを跳ね返せるか。来年は真価が問われるシーズンになる。
写真=BBM