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プロ野球20世紀・不屈の物語

20世紀に燦然と輝く無傷のシーズン15連勝も…日本ハムの左腕が大洋で経験していた2度の悪夢/プロ野球20世紀・不屈の物語【1969〜90年】

 

歴史は勝者のものだという。それはプロ野球も同様かもしれない。ただ我々は、そこに敗者がいて、その敗者たちの姿もまた、雄々しかったことを知っている。

7連敗、6連勝、13連敗……


大洋時代の間柴


 2013年に楽天田中将大が残した無傷のシーズン24連勝。楽天を初優勝へと導いた偉業というだけでなく、プロ野球の歴史に残る金字塔でもある。それ以前、20世紀のプロ野球では、日本ハム間柴茂有が1981年に残した15連勝が最多。田中と同様、日本ハムとしての初優勝に導いた快挙でもあった。チームが日本ハムとなって8年目。本拠地は現在の北海道ではなく、後楽園球場で巨人と“同居”している状態だった。

 前身の東映カラーを払拭し、観客動員の強化を図っていた日本ハムにプロ9年目の間柴が移籍してきたのは78年。田中は甲子園での活躍から期待を受け続けた右腕だったが、一方の間柴は対照的に、甲子園でセンバツ通算100号を被弾するなど、プロ入り前から逆風にさらされた左腕だった。69年の秋に大洋(現在のDeNA)からドラフト2位で指名され、プロ入りを果たした間柴だったが、さらに逆風は強まっていく。

 それでも1年目から22試合に登板したが、白星なく1敗、そこから3年目の72年まで7連敗。73年は2試合のみの登板だったこともあって勝敗つかず、6年目となる74年にプロ初勝利を挙げた。翌75年は開幕からリーグ最多となる3完封を含む6連勝と波に乗る。だが、これは長い悪夢の序章だった。以降、閉幕まで7連敗、続く76年は白星なく4敗、その翌77年も開幕から2連敗。この77年は「勝負運が弱いらしい」と、本名の「間柴富裕」から登録名を「間柴茂有」に改めて再起に懸けたシーズンだったが、足かけ3年で13連敗となってしまった。

 ただ、改名が奏功したのか(?)、ついに連敗が途切れる。4月17日の中日戦(千葉天台)。ロングリリーフで粘投する間柴に打線が奮起して逆転、そのまま逃げ切ってシーズン初、そして2年ぶりの白星をつかんだ。「とにかくホッとしました」と振り返る間柴だったが、そのオフに日本ハムへ。杉山知隆とともに、野村収との2対1のトレードだった。

 移籍1年目から先発の一角を担った間柴だったが、やはり黒星が先行して、初の2ケタ11敗。さらに翌79年は3勝と失速していく。転機は、その秋のことだ。新任の植村義信コーチから「なんで、そのボールで3勝なんだ」と言われたことが自信となって、続く80年に初の2ケタ10勝。後半戦に入ってフォークボールを新たに習得したことも功を奏し、フォークを打者が意識することでスライダーの効果が倍増した。迎えた81年。運に恵まれないことが多く、運に見放された状況も長かった間柴に、運も味方する。

“不敗神話”が後期優勝の原動力に


81年、連勝を続けた間柴のピッチング


 81年の連勝も、決して順調なペースではない。打ち込まれることもあったが、黒星はつかなかった。4月は1勝のみ。5月は2連続完投を含む3勝を挙げた。6月は1勝のみながら被安打5でシーズン初完封、7月も打ち込まれながらも粘り強く失点を抑えて3勝。当時は前後期制で、前期は4位に沈んだ日本ハムだったが、後期は開幕から快調に勝ち進み、一時は2位に転落したものの、8月15日からは首位を譲らず。その立役者の1人は間柴だった。

 8月2日には被安打5、1失点で完投勝利、14日には被安打9ながら完封でシーズン10連勝、26日には被安打4、2失点で3連続完投勝利。チームには「間柴が投げれば負けない」という雰囲気が醸成されていった。破竹の勢いは続く。9月1日には11安打を浴びながらも3失点、7日は被安打6の3失点だったが、1日は同点から、7日には3点ビハインドからの逆転でサヨナラ勝ちを果たし連続完投。13日にも被安打7の3失点で完投勝利を収めて、6連続完投勝利でシーズン14連勝に。18日も8回途中までを被安打7ながら2失点に抑えて、20世紀に燦然と輝く無傷のシーズン15連勝が完成した。

 開幕から閉幕までの連勝の数字こそ田中に更新されたが、シーズン勝率1.000はプロ野球の頂点で並んでいる。ちなみに、21世紀の田中と同様、日本シリーズでは土がついている。

 その後も息の長い活躍を続けていた間柴だったが、目標に掲げていた通算500試合登板まで残り19に迫りながらも自由契約に。チーム名も本拠地も変わったばかりのダイエーへ移籍すると、このプロ20年目の89年には15試合に登板して2勝。翌90年に通算500試合登板を達成すると、助っ人クローザーのゴセージを獲得するために選手枠を空けるべく、シーズン途中ながら現役を引退した。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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