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MLB、両リーグでDH制導入へ

 

今後、野球のスタイルの変化などもありナ・リーグもDHが正式に採用される見通しだ。これにより打者のマーケットは広がるだろう(写真はツインズのDH、クルーズ)



 先のワールド・シリーズ、DHについてだけ見れば、世界一になったナ・リーグ所属のドジャースは24打数2安打(打率.083)2四球、1打点1得点と不振だった。一方敗れたレイズは23打数8安打(.348)、3四球、2打点4得点と好成績だった。

 この結果は当然だろう。2020年シーズンは新型コロナ禍で、両リーグDH制でプレーされることになったが、キャンプ前はそういった事態は想定されておらず、ドジャースなどナ・リーグのチームはDH用の野手は特に用意していなかったからだ。

 ワールド・シリーズでは捕手のウィル・スミスが4試合、中堅手のコーディ・べリンジャーが1試合、左翼手のA・J・ポラックが1試合、DHで先発した。一方のレイズは筒香嘉智などDHで使える内外野手を複数獲得してあった。そしてシリーズではランディ・アロザリーナが3試合、オースティン・メドウズが3試合に先発した。

 さてそのMLBで、ナ・リーグでも半永久的にDH制を採用する方向だ。20年シーズンはコロナ禍で疲労、肉体的不安、ケガや故障を軽減するため、投手は打たなかったが、21年も騒ぎが収束するかどうかは定かではない。加えて以前から現場レベルでDH制を望む声が上がっていた。

 理由は、大事な先発投手に打撃や走塁でケガをしてほしくないから。19年MLBの投手の打率は.128と低く、431回犠牲バントをした。一昔前なら、バントの上手な投手が重要な局面で決めてチームを勝利に導くということがあったが、最近ではそういった戦術は重視されていない。

 近年ピッチングのレベルは飛躍的に上がり、100マイルの剛速球も珍しくなく、バントを試みること自体が危険だからだ。さらに近年、投手は長いイニングを投げず、早めに交代するようになった。となるとリリーフ投手に頻繁に打順が回り、複数の代打要員が必要になる。選手枠は26人で首脳陣にとって頭が痛い状況が生まれている。

 そして選手会はこの動きを大歓迎している。15球団でレギュラーポジションが1つずつ増えるし、DHは基本、高給取りになるからだ。ネルソン・クルーズ・ジュニアは40歳だが、今季もツインズで打率.303、16本塁打、33打点の好成績、年俸は1200万ドル(162試合で)だった。このオフFAだが、ナ・リーグでもDHとなればマーケットは広がり、多くのチームが手を上げることで、金額は吊り上がる。

 ブレーブスの左翼手マーセル・オズナは30歳で、今季は18本塁打、56打点のナ・リーグ2冠。ただし右肩に不安を抱え守備はいまいち。彼もFAで、DHとしても良い契約をもらえるだろう。

 レッドソックスは18年に打率.330、43本塁打、130打点のDH、JD・マルチネスをトレードしたいと考えている。年俸は1935万ドルと高過ぎて引き取り手がなかったが、DH制30球団となれば、手を上げるところも出てくるだろう。

 伝統を重んじるナ・リーグ関係者は「野球は9人でやるもの。選手は投げて打って走ってと、すべてやるべき」と反対するが、年々そういった声は小さくなっている。

 1973年1月にア・リーグがDH制を導入。それから48年が経った。現在は労使で交渉中。MLB機構側はDH制を導入する代わりに、今後も拡大プレーオフを続けるなど選手会側の譲歩を求めていると見られている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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