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編集部コラム「Every Day BASEBALL」

心優しき“マスター”のささやかな取材回避

 



 2020年の最後の発売となる「週刊ベースボール」1月4&11日合併号(12月23日発売)は恒例の「記録集計号」。公式戦に出場した全選手の個人成績が載っている。

 その仕事を進めていると、ある数字に目がとまり、思わず苦笑いした。阿部寿樹(中日)の併殺打21。これはセ・ワースト。パは中田翔日本ハム)の19がワーストだから、12球団を通しての併殺王だ。

 あれは9月のことだった。編集会議で「二遊間特集」が決まった。わが担当でもある中日の二遊間と言えば阿部−京田陽太。二遊間が流動的な球団も少なくない中、中日の二遊間はがっつり固定であり、取材を申し込んだ。

 コロナ禍で2人の対談はできない。それでも個々にインタビューしてページを構成するつもりでいた。2人とも快く引き受けてくれるだろうと思いきや、広報から帰ってきた答えはNO。「マスターが勘弁してほしいとのこと」だと言う。

 マスターとは、言うまでもなく阿部の愛称だ。当時、マスターはリーグで最多となる16の併殺打を放っていた。「そんな自分が併殺について語っている場合ではないでしょう」というものだった。

 タイミングが悪かった。選手からそう言われれば、あきらめるしかない。ちなみに京田には、この話は届いていない。こういう場合、最初に先輩から打診し、OKが出た段階で後輩におりる。京田より5歳上の阿部がNOを出した時点で企画はボツった。

 2020年の併殺王となった阿部だが、13本塁打と61打点は自己最高成績。確かにチャンスで併殺打もあったが、それ以上に快打を放った。21併殺打は阿部が期待され、一回りスケールの大きな打者になった証でもあるだろう。

文=牧野 正 写真=BBM
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