阪神の近本光司が今季の盗塁王となり、これでプロ1年目の昨季から2年連続での同タイトル獲得となった。プロ1年目に活躍した選手は、翌年に思ったような成績が残せないことが多く、よく「2年目のジンクス」などといわれる。しかし、近本は見事に2年目のジンクスを打ち破ったというわけだ。では、近本と同じく、「プロ1年目から連続してタイトルを獲得した選手」は過去に何人いるのだろうか?
NPB史でわずか11人のレアケース
1950年から現在までに、プロ1年目で個人タイトルを獲得した選手は全部で21人(助っ人外国人を除く)。このうち、翌年も活躍し、個人タイトルを獲得するに至った選手は以下の11人だ。
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宅和本司 1954年:最多勝利、最優秀防御率
1955年:最多勝利
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長嶋茂雄 1958年:最多本塁打、最多打点
1959年:首位打者
1960年:首位打者
1961年:首位打者、最多本塁打
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権藤博 1961年:最多勝、最優秀防御率
1962年:最多勝
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堀内恒夫 1966年:最優秀防御率、最高勝率
1967年:最高勝率
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安田猛 1972年:最優秀防御率
1973年:最優秀防御率
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稲尾和久 1956年:最優秀防御率
1957年:最優秀防御率、最多勝、最高勝率
1958年:最優秀防御率、最多勝
●野茂英雄
1990年:最優秀防御率、最多勝、最高勝率、最多奪三振
1991年:最多勝、最多奪三振
1992年:最多勝、最多奪三振
1993年:最多勝、最多奪三振
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松坂大輔 1999年:最多勝
2000年:最多勝、最多奪三振
2001年:最多勝、最多奪三振
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赤星憲広 2001年:最多盗塁
2002年:最多盗塁
2003年:最多盗塁
2004年:最多盗塁
2005年:最多盗塁
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攝津正 2009年:最優秀中継ぎ投手
2010年:最優秀中継ぎ投手
●近本光司
2019年:最多盗塁
2020年:最多盗塁
球史に残る活躍を見せた選手ばかりが並ぶ結果となった。1年目から打撃タイトル2冠の長嶋(ベースの踏み忘れがなければ三冠の可能性もあった)や、史上唯一の新人からの4年連続最多勝の野茂は圧巻の成績だ。また、赤星の「新人からの5年連続盗塁王」も野茂と同じく史上唯一の記録だ。
長嶋は大卒、野茂、赤星は社会人野球を経てのプロ入りだが、宅和本司、堀内恒夫、稲尾和久、松坂大輔は高卒での入団。にもかかわらず、いきなりプロ選手相手に快投し、さらにその翌年も相手チームのマークに屈することなく活躍し続けた。
いずれにしても、プロ1年目からタイトルを獲得するほどの活躍を見せ、翌年も同じかそれ以上の活躍を見せられるのは、やはり相当の実力がないと難しいもの。1950年以降でわずかに11例とレアなケースだけに、近本の「連続記録」がリアルタイムで見られているのは幸せなのかもしれない。
プロ1年目にタイトルを獲得し、翌年も圧巻のプレーで「2年目のジンクスを打ち破った選手」を紹介した。新人からの連続盗塁王は赤星の5年連続。果たして近本は阪神の偉大な先輩に追いつくことができるのか、来シーズンの活躍に期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM