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「前さばき」と「ポイントを後ろにして打つ」ことは両立できる?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.前さばきのうまいバッターと、ポイントを後ろにして打つバッターがいます。それぞれの特徴の違いを教えてください。また、前さばき、ポイントを後ろにして打つ、この2つの両立はできないのでしょうか。(東京都・40歳)



A.両立できたら最強だと思いますが難しい。私の知る限り唯一、全盛期の内川聖一が近かった

ソフトバンク時代の内川。抜群のバットコントロールを誇った


「両立ができたら最強ではないのか?」という質問の方の心の声が見て取れます。確かに、両立ができたら、これほどすごいことはないですが、これは難しいと思います。それぞれのタイプが異なるからなのですが、まず、『前でさばく』バッターは、変化球をうまくさばくタイプ。基本的に真っすぐ待ちの、変化球対応ができるバッターでしょう。

 一方で、『ポイントを後ろにおいて体の近くで打っていく』バッターは、基本的に球種を絞るタイプが多いように感じます。真っすぐなのか、変化球なのか、どちらかを待つ。変化球も『前でさばく』タイプとは異なり、例えばスライダーに張ったとしたら、外に逃げていくボールを追いかけるのではなく、内側に入ってくるボールを自分のポイントまで近づけて打っていきます。あくまでも私個人のイメージ(ちなみに、私は前でさばくタイプです)ですが、器用に何でも打ててしまうバッターではないタイプの選手が、どんどんポイントを近づけて、対応しているのではないでしょうか。

 アベレージを残せるバッターが多いのが『前でさばく』タイプで、イチロー(元マリナーズほか)さんや、小笠原道大(現日本ハムコーチ)さん、現役では近藤健介(日本ハム)や内川聖一(前ソフトバンク)などもそうでしょう。三冠王を獲った松中信彦(元ソフトバンク)さんもそうです。パワーも兼ね備えたバッターでしたが、そんな松中さんでも、ポイントを近くするとレフト方向にうまく打つということが難しく、そこからグンと回ることもなかなかできなかったと記憶しています。

イラスト=横山英史


 一方で井口資仁(現ロッテ監督)や松井秀喜(元ヤンキースほか)などは自分のポイントまで引き付けて、真っすぐでも、変化球でも打つバッター。やはりこの手のバッターは、前さばきはうまくなく、仮に前で拾えたとしても、不格好なスイングになっていました。

 私の見てきた選手でこの2つを唯一両立していたと考えられるのが、『前さばき』で名前を挙げた内川の全盛期。前さばきがうまいのは当然で、仮に泳がされても三遊間を抜きますし、内側に入られても押し込んでライトの前に落とす技術とパワーがありました。ベテランになり、もうパワーではなかなか勝負できなくなっていますが、あの頃の内川は最強のバッターだったと思います。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年12月7日号(11月25日発売)より

写真=BBM
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