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2020惜別球人

【2020惜別球人】中日・吉見一起 黄金期の精密機械エース

 

巧みな投球術でエースに君臨


引退セレモニーでは来季以降の中日が強くなることを確信していると力強く語った


 最後は右手でプレートをなでてマウンドを降りた。11月6日のヤクルト戦。本拠地ナゴヤドームの最終戦で吉見一起が15年間の現役生活に別れを告げた。2009年に16勝で最多勝のタイトルを獲得。その2年後の11年には18勝で2度目の最多勝と1.65で最優秀防御率の2冠。驚くほどのスピードも変化球もなかったが、吉見には“精密機械”と呼ばれるほど抜群の制球力があった。ていねいに低めを突き、巧みな外の出し入れで打者を手玉にとった。

 今季は開幕先発ローテーションの切符を手にしたものの、3試合に登板しただけで二軍降格となった。二軍で投げ続け、チームで唯一、規定投球回に達したが、気持ちはすでに固まっていた。エースとして大事な試合を任されてきた分、なかなか現実を受け入れられなかった。今年ダメだったらユニフォームを脱ぐ覚悟はできていたから、シーズン終了を待たずに潔く決断した。

 08年から5年連続の2ケタ勝利。常勝軍団だった落合政権下のエースとして活躍し、10、11年は球団初の連覇に貢献。13年に右ヒジを手術し、そこからは思うように勝てなくなった。チームも低迷し、エースの座も吉見から大野雄大へと移った。通算90勝は吉見のキャリアを考えれば少ない気もするが、それ以上に大きな存在だった。背番号19がチームに、そしてファンにどれだけ影響を与えていたかは、引退セレモニーを見れば一目瞭然だった。

「選手の皆さん、ドラゴンズは強いです。もっともっと強くなります」

 そう言い残して、元エースがチームを去った。

写真=BBM
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