週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

[MLB]MLB球団のコストカット ノンテンダーFA

 

今季の成績不振でノンテンダーとなったシュワーバー。今後もカブスは交渉のトビラは開いていくが、彼がどういう選択をするのか、注目だ



 メジャー・リーグのオフの重要な日にテンダー/ノンテンダーの日がある。今年は12月2日だった。メジャー球団は調停権を得ている選手に対し、来季も契約をテンダーする(差し出す)か否かを決め、否の選手はノンテンダーFAとなり、全球団と自由に交渉できる。調停権を持つ選手の来季の年俸は過去の例を基に決まるため、球団にとっては払いたくない高い金額になるケースが多々ある。

 例えばカブスのカイル・シュワーバー外野手。2020年の年俸は701万ドルで成績は打率.188、11本塁打、24打点と今ひとつ。それでも調停になれば800万ドルから900万ドルに上がると見られ、球団はノンテンダーとした。シュワーバーは14年のドラフト一巡4番目指名のエリート選手で、16年のワールド・シリーズでは打率.412、出塁率5割と活躍。17年から19年の3シーズンに94本塁打を放った。

 ジェド・ホイヤー編成本部長は「ドアはこの後も開けておく。彼は球団のレジェンド。戻ってきてほしい。本人はこの決定に驚いてはいなかったけど、がっかりしていた」と話した。カブスは毎年観客300万人を動員する人気チーム。20年シーズンは無観客だったため、収益のうち1億2500万ドルから1億4000万ドルを失った。ゆえに例年以上に財布のヒモは堅かったのである。

 MLBでは調停権を得る(通常3年のサービスタイムが必要)までは年俸は微増に据え置かれるため、選手は資格獲得を楽しみにしている。シュワーバーは18年の60万ドルから、19年は339万ドル、20年は701万ドルと昇給を果たしたが、このオフは契約してもらえなかった。

 一方でチームにとっても、まだ保有権が残っている選手を無償で手放してしまうのはもったいない。そこでノンテンダーの前にトレードしようと試みる。ツインズのエディ・ロザリオ外野手は、19年に打率.276、32本塁打、109打点の活躍。20年は.257、13本塁打、42打点だった。775万ドルの年俸は調停で860万ドルから1290万ドルに上がる見込み。そこでアウトライトウエーバーにかけ手を挙げる球団を待ったが、2日までにトレードは成立しなかった。

 抜け目がないのはドジャースだ。ブリュワーズからノンテンダー候補だった右腕コーリー・クネベルを期限直前にトレードで獲得。17年、39セーブ、防御率1.78でオールスターに出場した投手だが、トミー・ジョン手術を受け、復帰した今季は15試合に投げ防御率6.08と散々。年俸512万ドルと高いので、ブリュワーズはノンテンダーにしたが、資金力のあるドジャースにとっては問題ない額、復活に賭けたのである。

 言うまでもなく、選手にとってはノンテンダーとなるのはとてもつらいことだ。そこで12月2日の前に、所属球団と話し合意するケースもある。レッドソックスの左腕エドュアルド・ロドリゲスは20年年俸830万ドルだったが、新型コロナウイルスに感染したあと、心筋炎を発症、一度もマウンドに立てなかった。19年は203回1/3を投げ19勝の投手。21年に復活できるかどうかは定かでないが、レッドソックスにとっても重要な戦力ゆえ、1年830万ドルで合意した。ちなみに2日のノンテンダーの総数は59人だった。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング