たくさんの引き出しを持つ男だった
ああ、もったいないな……。
個性派選手がまた一人、ユニフォームを脱いだ。
阪神のいぶし銀・
上本博紀だ。広陵高から早稲田大と、いわばエリートコースを経て阪神入り。
体は決して大きくないが、堅実な守備、独特のフォームからのしぶとい打撃、さらにガッツでチームに貢献し、上本ファンはたくさんいたはずだ。
守備位置はセカンドだったが、昔から玄人好みの選手が多いポジションではある。
広島なら
菊池涼介がいるし、昔なら
大下剛史さん、
木下富雄さん、
中日の
高木守道さん、
巨人の
篠塚和典さんとかね。
要は、あまり体は大きくないが、攻守走で野球センスと野球脳が優れている人が多い。上本のように、派手さはないが、味方のピッチャーからすれば、いるだけで心強い存在というのかな。
ただ、プロ世界、特にフロントは野手を打撃力で見る場合が多く、大型でバッティングがいい選手を優先される傾向がある。
だから打撃が非力でも守備がうまい玄人好みの選手が、いつの間にかユーティリティーとか言われ、出番が減っていくこともあるが、投手目線で言えば、そんなにガンガンホームランを打ってくれなくてもいいから、堅実に守り、出塁率が高くて進塁打がしっかりできる選手のほうがありがたかったりする。
実際、そういうタイプの選手と話して思うのは引き出しの多さだ。体のハンディがありながらプロの世界でやっていくために、体も頭も目いっぱい磨き、さらに自分の個性を生かすプレーを考えていたからだと思う。
上本も打撃フォームを結構、変えていたが、それだけいろいろ考え、試したんだと思う。苦労した分、指導の際の引き出しも多いはずだ。いいコーチになるだろう。
ただ、まだ34歳だし、もう少しやってほしかったな。広島が取ったら兄弟プレーヤーだったしね。