今季は119試合に出場し、打率.342、29本塁打、86打点をマークした柳田
ケガに泣いた昨季。いまや球界を代表するスラッガーへと成長を遂げた
柳田悠岐であっても、復活を期すシーズンへの思いは特別だった。「一からレギュラーを獲るつもりで」。まっさらな気持ちで臨んだ。
開幕こそ例年同様のスロースタートだったものの、7月に入ると一気に爆発。月間打率は.433と打ちまくり、チームを首位へと押し上げた。自身は出塁を重ねてプロ野球タイ記録となる月間32得点もマーク。その後も大きく調子を落とすことはなく、打撃主要部門では常にリーグ上位にランクインする活躍ぶりだった。
「ここぞというときには、とにかく集中して。邪念とかを振り払って、ただボールに集中する、という感じです」
試合に出続ける中で、磨かれていった集中力で、何度となくチームを勝利に導く一打を放ってきた。「打撃スタイルよりも、“ヒットになる”という結果をイメージする」。リーグ最多の146本を積み重ねたヒットだけではない。時折見せる体勢を崩されながらもホームランにしてしまう驚愕のパワーに、
工藤公康監督も「彼にしか打てない」「分からないです……。何であんなに飛ぶのかな」と困惑の表情を浮かべるほどだった。
だが、柳田にとって数字はまったくと言っていいほど関係ない。「全部の試合に出ることしか考えていない。数字に対しての意識はない。それよりも毎日毎日プレーしたい」と、ことあるごとに口にしている。
昨季は野球ができるか分からない時期もあった。苦しいリハビリを乗り越え、実戦復帰した際には涙を流した。あらためて感じた野球ができる喜び、野球の楽しさ。“野球少年・柳田悠岐”は今季もその気持ちで全力でプレーを続けた。レギュラーシーズンの欠場はわずか1試合。大きな離脱がなくシーズンを終えられたのは2015年以来だ。
開幕前に語っていた復活のシナリオは「全試合に出て、素晴らしい成績を残したい」。まさに有言実行だった。並み居るライバルを抑えて、自身初となる最多安打のタイトルも獲得。完全復活を遂げた背番号9。栄冠を勝ち取ったチームの中心にはこの男がいた。
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