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現役では誰が経験者? 3度経験の選手もいる幻の本塁打記録

 

長嶋が新人時代に経験している「幻の本塁打」を新庄は……


 日本プロ野球最高のスターと称される長嶋茂雄は、デビューシーズンにベースの踏み忘れで本塁打取り消しを受けている。最終的に長嶋は29本塁打に終わり、取り消しがなければルーキーイヤーでのトリプルスリーもあり得た。では、こうした「幻の本塁打」はこれまでに何度起こっているのだろうか? 「幻の本塁打記録」をまとめてみた。

ボークや試合放棄で本塁打取り消しになったことがある!


 2リーグ制となった1950年以降、スタンドインしたにもかかわらず、なんらかの理由で本塁打が取り消しとなった事例や、ハプニングにより本塁打と認められなかった事例は「28回」発生している。

 1950年以降で最初の「幻の本塁打」は、1951年7月25日に大阪スタヂアムで行われた阪神対松竹の試合で起こった。この試合では、阪神の先発投手だった駒田桂二が2回の攻撃で見事な3ランを記録。しかし、相手投手の投球がボークと判定されたために、本塁打も取り消しになってしまった。現在はボーク時の投球であっても本塁打を放った場合は認められるようになっているが、当時は認められていなかった(1954年にルール改定)。

 1954年7月25日の阪神対中日の試合では、10回表に、中日の杉山悟が上記の阪神・駒田から本塁打を放った。ところが、阪神側がその裏の攻撃を放棄したため、その回そのものの記録が取り消し。杉山の本塁打も幻となった。

最も多いのが前走者の追い越し


サヨナラ満塁弾を放った新庄だったが……


 1957年には、南海の穴吹義雄が4月11日の大映戦で本塁打を放つも、一塁走者を追い越してしまい、本塁打から単打に記録変更となった。実は追い越しによる本塁打取り消しは最も多く、28例中9回が追い越しによるものだ。

 追い越しでの本塁打取り消しを経験した選手は、穴吹以外では以下の8名がいる。

柳田利夫(大毎/1961年)
星山晋徳(サンケイ/1965年)
トニー・ロイ(西鉄/1965年)
白仁天(東映/1967年)
行沢久隆日本ハム/1976年)
ウェイン・ギャレット(中日/1979年)
エディ・ディアス広島/1999年)
・SHINJO(新庄剛志)(日本ハム/2004年)

 中でも有名なのは、新庄が日本ハム時代に起こした「田中幸雄と抱き合い事件」だろう。2004年9月20日のダイエー戦(札幌ドーム)、9回裏同点の場面で、新庄は値千金のサヨナラ満塁本塁打を放った。しかし、新庄はベース間で待っていた一塁走者の田中と喜びのあまり抱き合い、その勢いで一回転。これが走者追い越しと判定され、記録は単打に変更されてしまったのだ。幸い、三塁走者の奈良原浩が本塁に到達していたため試合はサヨナラ勝ちのままだったが、あわや勝利も取り消しになるところだったのだ。

ベース空過による取り消しは遺恨が発生したことも


「ベース空過」による取り消しは、長嶋がデビューイヤーに起こしたものを含め4度発生している。長嶋以降は、1981年7月19日の大洋戦(横浜)で、広島のアート・ガードナーがホームベースを踏み忘れてしまい本塁打取り消し。2017年には、オリックスクリス・マレーロが6月9日の中日戦(京セラドーム)で本塁打を放ったが本塁を空過。これによりマレーロの「NPB初出場試合での本塁打」は幻と消えた。

 2006年6月11日に行われた巨人ロッテ戦(千葉マリン)では、巨人の李(イ・スンヨプ)が3回の攻撃で本塁打を放った。しかし、李がホームベースに帰ってきた後に、ロッテ側が「一塁走者・小関竜也が三塁を空過した」とアピール。これが認められ、本塁打は取り消しとなってしまった。巨人サイドは小関が三塁を踏んでいたと主張し、セ・リーグに抗議文を提出している。

通算三度の本塁打取り消しにあった新庄


 新庄は、先の前走者追い越し以外にも、観客の妨害による本塁打取り消しを2度経験。つまり、計3本も「幻の本塁打」を経験しているのだ。もちろんこれはNPB最多。最初に経験したのは1995年6月20日の横浜戦(横浜)。新庄は9回にスタンドイン濃厚といえる打球を放ったが、阪神応援団が振る「新庄を応援する旗」にボールが当たりグラウンドに落下。二塁打となってしまった。

 日本ハム移籍後の2004年には、4月17日のロッテ戦(東京ドーム)でライトスタンド側に強烈な打球を飛ばすも、スタンド最前列の観客がスタンドイン直前に捕球。そのため、本塁打と認められず、これも二塁打として記録されることになった。

 打球に観客が触れてしまったケースは、巨人の坂本勇人も経験している。2014年4月19日の中日戦(東京ドーム)の6回、レフト方向に本塁打性の当たりを放つも、スタンド最前列の観客が落下直前にすくい上げるように手で触れてしまった。ビデオ判定の結果、「観客が触れなければスタンドインしなかった」と判定され、記録は二塁打となった。「本来は本塁打でなかったはずの打球が、観客が触れたことでスタンドインした」という珍しいケースだ。

 2015年9月12日の阪神対広島戦(甲子園)では、広島の田中広輔が外野フェンスを越える打球を放った。ボールはフェンスを越えた後に、何かに当たってグラウンドへ跳ね返った。そのため、インプレーと判定され記録は三塁打。審判団によるビデオ判定も行われたが、結局判定は覆らなかった。しかし、広島が再検証を要求した結果、ボールはスタンド側に張られたワイヤーに当たっていることが分かり、誤審が判明した(試合成立後に分かったため記録は変更されず)。

 幻の本塁打は、2017年のマレーロ以降は起こっておらず、また現役で経験しているのは坂本(特殊なパターンではあるが)と田中広の2人だけ。レアな記録だけにそうそう生まれるものではないが、果たして現役3人目の経験者は生まれるのか? また、坂本と田中広は新庄に続く複数回経験者になるのか、来季のプレーに注目したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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