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ドラフト上位候補・森木大智のすべてを知る「左手」。目標は夏の甲子園で全国制覇

 

相性抜群のバッテリー


高知高の151キロ右腕・森木大智(左)と主将で捕手の吉岡七斗(右)は、相性抜群のバッテリーである


 2021年、高知に注目のバッテリーがいる。

 ツーショット撮影をお願いすると、2人はそろって照れ笑いを浮かべた。特に恥ずかしそうな表情を見せたのが、高知高の主将で正捕手を務める吉岡七斗だ。

 151キロ右腕・森木大智とコンビを組み、21年で7年目を迎える。ドラフト上位候補にも挙がる「剛腕」のすべてを、その左手が知っている。

 吉岡が森木のボールを初めて受けたのは、県選抜チームでプレーした小学6年時で、岡山で開催された全国大会を制している。

「当時の大会の顔ぶれを見ても、ダイチに並ぶ選手はいなかったです。県内の大会ではライバル同士で、自分が投げることもありました。バチバチ、でしたよ(苦笑)」

 加茂小(加茂スポーツ少年団)でプレーしていた吉岡は中学進学に際し、迷っていた。

「地元の公立校に進むか……。高校も見据えて、野球で高いレベルを目指していくには、高知中だと思いました」

 当時、高知中を率いた高知高・濱口佳久監督によれば、早い段階で吉岡が同校への進学を決めたことが、森木の進路にも少なからず影響したという。

 森木は高知中3年夏、軟式球では過去に例がないと言われる最速150キロを計測した。

「すでに148キロとか出ていたので、150キロにも正直、驚きはありませんでした。春の大会では21個アウトのうち、19三振という試合もありましたし……。軟式だと、打者は前に飛ばない。敵はいなかったです」

 主将・吉岡が攻守でけん引した高知中は春の全日本少年と夏の全中を連覇。森木は「スーパー中学生」として騒がれ、鳴り物入りで高知高へ進学した。1年夏からエース番号「1」を着けたものの、決して順風満帆であったわけではない。コロナ禍で今夏は地方大会と全国(甲子園)大会が中止。今秋は四国大会1回戦敗退で、甲子園出場のチャンスは事実上「夏一本」となっている。

研ぎ澄まされた2人の空間


 冬になっても、高知高グラウンドの三塁側ブルペンは熱い。吉岡はいつも1時間以上、森木の快速球で、心地良い捕球音を響かせている。最近の投手はピッチング練習の球数が少ない傾向にあるが、森木は投げて体に染み込ませるタイプ。吉岡もエースの投球に、とことん付き合う。

「硬式はいくら速くても、ボールをとらえられます。いかに、精度を上げていくかが課題です。低め、低めを狙い過ぎると、小さくなる傾向があるので、あえて、高めを意識して投げても良いと思います」(吉岡)

 1球1球を大事に、その場で意見を交換し合う。入り込む余地がないほど、研ぎ澄まされた2人の空間が、そこにはあった。目の前の練習に全力を注ぎながらも目標は一つ、夏の甲子園での「全国制覇」である。森木は「アイツが主将をやっていて良かったと思ってもらえるためにも、甲子園で勝ちたい」と言えば、吉岡は「狙えるだけの実力がある。中学時代から教えていただいている濱口監督に甲子園初勝利をプレゼントして、勝ち上がりたい」と決意を語る。

 吉岡に森木との「友情」を聞くと「長いので……。そんな意識はないです」と照れ隠し。一方、森木は「悪い部分を指摘してくれる。たまには、褒めてくれるんです」と、笑顔で全幅の信頼を寄せる。もはや2人には、多くの言葉はいらない。吉岡の左手がすべてを熟知しており、森木はサインを信じ、ミットめがけて投げ込むだけである。

 泣いても笑っても、残すは1年だ。相性抜群のバッテリーは集大成の21年夏へ向けて、鍛錬を重ねている。

文=岡本朋祐 写真=梅原沙織
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