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プロ野球回顧録

【背番号物語】巨人「#3」長嶋茂雄のトレードマークは中心選手だけの称号。背負ったレジェンドの人数は?

 

“三枚目”ぶりも人気に


巨人で背番号「3」を着けた長嶋


 物にあふれ、価値観も多様になった近年では考えにくいが、かつて日本人が好きなものとして「巨人、大鵬、たまご焼き」と言われていた時代があった。もちろん当時も、いわゆるアンチ巨人はいたし、大鵬に立ち向かう力士に声援を送っていた人も、たまご焼きが苦手という向きもいただろうが、少なくともプロ野球の世界では、巨人がド真ん中にいたことは間違いない。銭湯の下駄箱が「1」と「3」から埋まっていったと言われていた時代もあった。銭湯を経験したことがない若い人も多いだろうが、ほとんどの下駄箱には番号が振られていて、数字にこだわらずに入れやすいところへ外履きを入れる人もいただろうが、プロ野球が好きな人が多く、数字にこだわる人は、すべての下駄箱が空いていたら「1」か「3」に入れた、ということだ。

「1」は巨人で王貞治が着けていた背番号。これについては紹介したばかりだ。そして「3」。これは同じ巨人で、長嶋茂雄が背負っていたナンバーだ。長嶋は監督としても2000年から「3」で指揮を執り、翌01年まで務めているから、若いファンでも長嶋の「3」を見た人は多いかもしれない。選手として王と人気を二分した長嶋。ふたたび監督として「3」を背負うことになったときのフィーバーは、当時の人気を雄弁に物語るものだった。

“ミスター・ジャイアンツ”、そして“ミスター・プロ野球”と呼ばれた長嶋は1958年に入団。まだプロ野球が大学野球より格下に扱われていた時代に、立大のスターだった長嶋の入団は、巨人だけでなく、プロ野球のエポックでもあった。長嶋はデビュー戦で国鉄の金田正一と対戦して4打席すべてで豪快な三振。のちに巨人で通算400勝を残して引退する金田は、その空振りに脅威を感じたという。長嶋は1年目から三冠王に迫る活躍で、最終的には打率.305はリーグ2位に終わり、本塁打王、打点王の打撃2冠。走っても37盗塁をマークして、トリプルスリーを“達成”したが、ベースの踏み忘れで1本塁打が幻となって29本塁打に。三冠王もトリプルスリーも騒がれない時代だったが、そんな“三枚目”ぶりも含めて、長嶋の人気は爆発した。

 長嶋は翌59年に開催されたプロ野球で初めての天覧試合でサヨナラ本塁打。これを機にプロ野球が国民的なスポーツとなっていったと言われ、その後は王の成長で数字では後塵を拝することも多くなった長嶋だが、そんな勝負強さ、特に大舞台での圧倒的な強さで抜群の存在感を発揮し続けた。74年の引退セレモニーも伝説だ。近年は派手な演出が施された引退試合が定番だが、その先駆け的な存在も長嶋だった。巨人の「3」は長嶋の引退とともに永久欠番に。2000年に永久欠番としては異例の復活を果たすも、長嶋監督の退任とともに、ふたたび永久欠番となっている。

 王よりも前は多才な選手が着けていた「1」とは対照的に、長嶋の前の「3」には明確と言っていい傾向が存在する。プロ野球が始まった36年から、巨人の中心選手がリレーしているのが「3」だ。

契約“第3号”はプロ野球で最初の“三冠王”


長嶋の前に「3」を背負っていた千葉


【巨人】主な背番号3の選手
中島治康(1936〜42)
千葉茂(1946〜57)
長嶋茂雄(1958〜74、2000〜01)

 巨人の前身、大日本東京野球倶楽部の契約“第3号”選手だった中島治康が36年に背負ったのが「3」。猛打の四番打者として活躍しただけでなく、“班長”と呼ばれた中心選手だった。2シーズン制だった38年の秋に10本塁打、38打点、打率.361で三冠王に。ただ、まだ当時は用具も粗悪で、三冠王の概念もなかった時代だ。

 戦後、中島は兼任監督として46年シーズン中に復帰して、当時は監督の背番号だった「30」に。開幕のタイミングで空席だった「3」を着けたのは、45年の東西対抗で復帰を果たした千葉茂だった。千葉は四番打者タイプではなく、二塁のベストナインは7度を数えるが、打撃タイトルとは無縁、巧みな右打ちで鳴らした職人肌。チーム内の人望は抜群で、50年代の黄金期まで活躍を続けた。千葉は56年までプレーして、翌57年も二軍監督として「3」を着けたが、長嶋が入団してきたことで「3」を譲っている。

 プロ野球の巨人としては通算“3人”となる「3」だが、大日本野球倶楽部の35年に「3」だったのが田部武雄。36年に巨人で「1」を着けながら公式戦の出場なく退団した野球界のレジェンドだ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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