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[MLB] マイナー組織の大改革が進むMLB

 

100年以上続くマイナーの組織との良好な関係を崩してまで育成の向上を目指し、マイナー改革を始めたMLB(写真はイメージ)


 MLB機構が傘下のマイナー球団を160から120に削減、あらためて120の球団にメジャーの30球団の傘下に入るどうかの招待状を出した。各メジャー球団、傘下に3A、2A、ハイA、ローAの4チームの構成になる。

 これまでは1901年にできたナショナルアソシエーション・オブ・プロフェッショナルベースボールリーグという組織があり、マイナー・リーグをまとめてきた。ご存じの方も多いと思うが、マイナー球団にはそれぞれオーナーがいて、チケットを販売し、球場内の広告を売り、独立してビジネスをしてきた。

 MLB球団は契約金や給料を払っている若手選手をマイナー球団に預け、あるいはケガから復帰途上のメジャー・リーガーをリハビリでプレーさせる。マイナー球団のオーナーは、おかげで選手費用を払わずに興行を続けられ、MLB球団も抱えている若手選手たちにたっぷり実戦の経験を積ませることができた。

 両者はウィンウィンの関係で、プロフェッショナル・ベースボール・アグリーメントを結んで来たのだが、MLB機構が関係にピリオドを打った。なぜこうなったかというと、MLBがマイナー組織を、若手選手により効率的にしっかり育成できる環境に改善したかったからだ。ロッカールーム、ウエートルームなど、施設がお粗末な球場がある。遠征にバスで10数時間もかかるリーグがある。MLB球団は高額の契約金を払った金の卵を劣悪な環境に置きたくないのだ。

 劣悪な環境に置くことでハングリー精神を養うというのは20世紀の考え方であって、品質の高い高級車(スーパースター)が欲しければ、トップレベルの環境が必要なのだ。招待状とはPDL(プロフェッショナル・ディベロップメント・ライセンス)で10年契約。これを受諾すれば、MLBの求めるスタンダードに合わせ、施設を近代的なものに改善しなければならない。

 打撃ケージで穴の空いたネットを放置していてはならない。監督室もスタッフが集まってミーティングできる広さで、女性審判が使うロッカールームも用意しないといけない。加えて、これまでは新球場建設や改築で、マイナー球団のオーナーが地方自治体と交渉してきたが、今後はMLBが直接行うという。

 さらにマイナーの観客の顧客データもMLBが握り、ビジネス面でもイニシアチブを取る。当然、反発するオーナーは出てくる。しかし招待状を受け取らなければ、120の枠から漏れ、独立リーグのチームのオーナーになってしまうだけなのである。

 筆者は今回の改革で、地方の40もの街がマイナーチームを失うのは残念だとは思うが、改革は必要不可欠だったと考える。今まではあまりにも効率が悪過ぎた。例えばナショナルズの3Aチームは大陸の反対側のカリフォルニア州フレズノにあった。それが再編で東海岸ニューヨーク州のロチェスターに移る。ここにあったツインズの3Aチームは、ミネアポリスの隣のセントポールに移る。フレズノはロッキーズのローAのチームになる。

 地理的に近い方が断然便利。スターを育ててナンボのプロ野球。育成環境の向上はとても大事なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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