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背番号物語

【背番号物語】野村克也「#19」足して10になれば吉。唯一の例外で長距離砲ナンバーの元祖に?

 

監督としては「73」「82」も


3年目から「19」を背負い、他球団に移籍しても同じ背番号を着けた野村


 まだ交通系のICカードがなかった時代、鉄道に乗るためには切符を購入する必要があった。若い人にはピンと来ないかもしれない。その切符には乗車駅と値段などの情報とともに4ケタの数字が書かれており、それを足したり引いたりして10になると吉、と言われていて、もちろん迷信の類だろうが、その4ケタで算数をすることが格好の暇つぶしになっていた。その由来も、その4ケタの数字が意味するものも知らないが、プロ野球の世界で、「足して10になる」背番号を徹底的に好んだのが野村克也だった。

 南海(現在のソフトバンク)の司令塔だった時代からデータを駆使し、それをヤクルトの監督として“ID野球”に結実させた野村だが、背番号に関してはゲンを担ぐタイプ。そのデータ野球と矛盾するようでもあるが、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と語っていたように、「不思議の勝ち」も勝ちは勝ちであり、そのために運を味方につけようとしたのかもしれない。

 1953年にテストを受けて南海へ入団した野村は、3年目の55年に正捕手の座をつかむと、59年のリーグ優勝、初の日本一に大きく貢献。65年には2リーグ制では初めての三冠王に輝き、首位打者は1度のみだったが、本塁打王は61年からの8年連続を含む9度、打点王は62年からの6年連続を含む7度を数える。70年からは監督も兼任して、73年にはリーグ優勝。南海を退団してからは“生涯一捕手”を掲げてロッテ西武と渡り歩き、80年まで27年間プレーを続けた。そのうち25年間で背負い続けたのが「19」だ。ただ、最初の2年間だけが「60」。テスト入団であり、ブルペン捕手としてしか期待されていなかったことが分かる数字だ。

【野村克也】背番号の変遷
#60(南海1954〜55)
#19(南海1956〜77)
#19(ロッテ1978)
#19(西武1979〜80)

 簡単な算数なので説明されなくても分かると叱られそうだが、簡単なことを疎かにするのを嫌った野村にボヤかれそうなので、「足して10になる」背番号を挙げていってみたい。近年は育成選手が3ケタの背番号を着けているが、野村が選手として活躍した時代は2ケタまでで、この中から、まず1ケタの数字が除外される。「10」もダメ。1と0を足すと1にしかならないからだ。足して10になる数字で、もっとも若い番号が「19」。続いて、「28」「37」「46」「55」「64」「73」「82」「91」となる。この中から野村は監督としても背番号を選び、ヤクルトで「73」、阪神で「82」と「73」、楽天では「19」を背負った。だが、どの球団でも野村の背番号は永久欠番になっていない。落合博満の「6」と同様、いや、それ以上に、永久欠番にならなかった偉大な背番号といえるだろう。

継承される背番号


現在、ホークスの「19」は野村と同じ捕手の甲斐の背中に


 南海の「19」は、初代は投手の政野岩夫で、2代目も投手の神田武夫。政野は39年から負け越しながらも2年連続で2ケタ勝利を挙げた右腕だが、40年オフに応召して、41年に神田へと継承される。神田は2年間で49勝、防御率1.36とエース格の活躍も、43年に病死。その43年に復帰して「8」となった政野も、ふたたび44年オフに応召して戦死した。

 そんな不屈の背番号を戦後、2リーグ時代に捕手のナンバーとした印象づけたのは野村ではなく、その前任者の筒井敬三。筒井が55年オフに高橋へ移籍したことで野村が「19」を背負い、捕手というイメージ以上に、自らの象徴にまで昇華させた。時代は流れ、チームもダイエーを経てソフトバンクとなり、「19」は2020年に捕手の甲斐拓也が継承。およそ半世紀を経て誕生した野村の後継者だ。

 一方、南海の「60」は野村が初代だ。その後は指導者の背番号となったが、これを83年に「本塁打の目標に」と着けたのが、野村とは三、四番に並んだこともある門田博光。60本塁打はならなかったが、「60」で2度の本塁打王に輝いて、長距離砲のナンバーという印象を築く。他チームでも巨人で落合が1年だけ着け、西武では中村剛也が「60」で6度の本塁打王に輝いている。もちろん野村も通算657本塁打の長距離砲。ただ、野村が「60」で放った本塁打はゼロだ。長距離砲ナンバーの元祖であることは確かだが、やはり野村といえば「19」なのだ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM

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