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プロ野球回顧録

山本由伸を発掘 現役時代に日本人最速タイの159キロ計測したスカウトは

 

「山口2世」と呼ばれて


現役時代に当時の日本最速タイ記録をマークした山口


 150キロ後半の直球、カットボール、スプリット、カーブ、シュートと超一級品の変化球を武器に球界を代表する右腕となったオリックス山本由伸。2020年も8勝4敗、防業率2.20の好成績で最多奪三振(149)のタイトルを獲得した。

 岡山県備前市で生まれ育った山本は宮崎・都城高に進学したが甲子園出場は叶わなかった。宮崎県下では名投手として知られたが、同期でドラフト1位の作新学院高・今井達也(現西武)、履正社高・寺島成輝(現ヤクルト)、横浜高・藤平尚真(現楽天)のほうが有名だった。山本はドラフト4位でオリックスに入団。この「宝の原石」に熱視線を送り、プロの世界に導いたのが山口和男スカウトだった。

 山口スカウトは山陽高から広島電機大を経て三菱自動車岡崎硬式野球部で頭角を現す。身長186センチの長身からしなやかなフォームの本格派右腕は大きな可能性を秘めていた。逆指名のドラフト1位でオリックスに入団。剛速球右腕・山口高志と同じ背番号14を着け、「山口2世」と呼ばれた。

2000年、逆指名のドラフト1位でオリックスに入団した山口(右)。監督は仰木彬だった(中)


 プロ2年目の2001年に32試合登板で5勝6敗2セーブ、防御率3.42で一軍定着すると、02年に当時の日本人最速タイ記録となる158キロを2度計測。一躍注目されるが、9月に登板過多で右肩痛を発症して戦線離脱してしまう。

 エースナンバーの背番号「18」に変更した03年は右肩手術で一軍登板機会なし。04年に故障から復帰して17セーブをマークする。ポスティングシステムでのメジャー挑戦を志願するが、中村勝広GMに慰留されて残留した。球界を代表する速球派としてさらなる飛躍が期待されたが、3度の危険球退場など制球難で自滅するケースが目立った。一軍登板なしに終わった09年限りで現役引退。現役10年間で173試合登板、14勝15敗29セーブ4ホールド、防御率3.41という成績だった。

 引退後はオリックスのスカウトに転身。担当スカウトとして素質にほれ込んだのが当時高2の山本だった。週刊ベースボールで2人は昨年2月に対談している。山本は「僕は和男さんを最初に見たときは『デカッ』と思いました。プロの世界でやられていた方。やっぱり体が大きいなって」と振り返ったのに対し、山口スカウトは「まあ、由伸に勝っているのは体の大きさだけだから(笑)。でも、口を開けば18歳とは思えないほど、しっかりしているなと感心した。将来のビジョンもしっかり持っていて、人間性が素晴らしいと感じたものだよ」と振り返っている。

「もう超一流です」


球界のエースへの座も視界に入っている山本


 山本は19年の「プレミア12」で自己最速の158キロを計測。山口スカウトの現役時代の最速記録に並んだが、「いや、確実に僕を超えていますよ。技術も考え方も。由伸のストレートの平均球速は150キロを超えているし、150キロに近いカットボール、シュート、フォークも投げる。それも先発で。そりゃ打てないですよ。打者はボールが消えている感覚だと思う。もう超一流です」と絶賛する。

 さらに、「いろんなことにアンテナを張って、多くのことを吸収しようとするのが由伸の素晴らしいところ。それに由伸が活躍してくれることで、僕も得られるものがある。由伸の高校時代、何を評価していたのか、何に目を奪われたのか。そういう指標を持たせてくれるのは、今こうやって活躍してくれているからなんだよね」と向上心の強さを高く評価。山本は「ありがとうございます。そんな僕をプロに入れてくれたのが和男さんです。その和男さんと同じ18を着けられることに喜びを感じますし、18=山本由伸となれるように頑張ります」と感謝の念を口にしている。

 山口スカウトにとって山本の活躍が大きな心の支えになっているのは間違いないだろう。

写真=BBM
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