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背番号物語

【背番号物語】近鉄「#6」“いてまえ大将”の背番号は遊撃手の系譜。そして欠番のフィナーレ……

 

初優勝も遊撃手の背で


近鉄の背番号「6」と言えば金村の印象が強い


 高校野球で二塁手の背番号が「4」なら、遊撃手は「6」。近鉄で二塁手の大石大二郎(第二朗)が「4」を着けたように、近鉄の「6」は遊撃手が着けることが多かった。近鉄1年目は欠番だった「4」の一方で、「6」は遊撃手で32歳の島方金則が背負っている。島方は2年で引退し、後継者となった樋口貞一も内野手で、遊撃だけでなく、二塁や三塁も守ったバックアップ。これで遊撃手の印象が薄まったのか、1954年に司令塔の原勝彦が継承して、60年まで背負った。この間、56年に助っ人で内野手のパレニイが着けた資料もあるが、「3」の系譜にも56年にパレニイの名前があり、いずれにしても期待の長距離砲だったパレニイはゼロ本塁打に終わって1年で退団している。

 61年に1年だけ内野手の谷野信次郎が着けて、翌62年に継承したのがプロ8年目の島田光二で、この62年は一塁手として規定打席にも到達しているが、内野の全ポジションをこなしたユーティリティーだった。ふたたび「6」を遊撃手のナンバーとしたのが、67年に後継者となった安井俊憲(智規)。テストを受けて61年に入団した安井は、やはり内野の複数ポジションでバックアップを務めながら着実に台頭、「53」から「13」に変更した66年に遊撃の定位置をつかんで、満を持して「6」に。68年には54盗塁で盗塁王に輝いている。ただ、まだ当時は近鉄が優勝とは無縁だった時代。長い低迷の原因は、創設期にさかのぼる。

 近鉄がプロ野球に参加したのは現在の2リーグ制となったのは50年だが、そこへ至るまでのプロ野球の紆余曲折は、まさに仁義なき戦い。新たに参加した球団は既存の球団から容赦なく選手を引き抜き、その混乱を見かねたGHQが声明を出すほどの異常事態だった。そんな中で唯一、「引き抜き自粛の申し合わせ」を遵守した新チームが近鉄で、愛称は公募によってパールスに。愛くるしいニックネームを冠した紳士的なチームは、残念ながら無力だった。近鉄は59年にバファロー、62年にバファローズとなり、ニックネームは猛々しくなったが、打線の異名は単打ばかりの散発“ピストル打線”。初のリーグ優勝は79年で、当時の12球団で最も遅い歓喜だった。

 ただ、翌80年にはリーグ連覇、89年には3度目のリーグ優勝を果たし、いつしか打線は“猛牛打線”、そして“いてまえ打線”と呼ばれるように。そんな近鉄の過渡期は、「6」の過渡期でもあった。初優勝の79年に「6」だった石渡茂は強打の遊撃手。当初は「32」で、76年から「6」となって攻守に成長を遂げ、リーグ連覇に貢献する存在に。だが、82年オフに巨人へ移籍、欠番を挟んで85年に助っ人で外野手のバンボが着けて31本塁打を放つと、一気に印象が派手になる。87年から「6」を背負ったのが“いてまえ大将”金村義明だった。

6月6日に生まれた遊撃手


近鉄で最後に背番号「6」を着けた武藤


 金村は報徳学園高を夏の甲子園で優勝に導いたエースで、ドラフト1位で82年に入団して内野手に転向。当初は「28」だったが、86年に三塁手として初めて全試合に出場、サイクル安打も達成して、バンボの退団で空席となった「6」に変更した。最後の最後まで優勝を争った88年には終盤に骨折、10月19日のロッテとの最終戦ダブルヘッダー(川崎)、いわゆる“10.19”ではベンチで号泣したが、翌89年は中盤から合流して優勝に貢献。豪快なハッスルプレーだけでなく、明るいキャラクターでも存在感を放った。金村は94年オフに移籍した中日でも「6」を着けている。

 一方、近鉄の「6」は欠番を経て96年シーズン途中に阪神から移籍してきた投手の久保康生が着けたが、久保の引退で、ふたたび98年から欠番に。そして2000年、武藤孝司が継承したことで遊撃手の背中に戻る。誕生日も6月6日の武藤。「48」で2年目の97年に遊撃のレギュラーとなり、「6」となった途端にキャリアハイの打率.311をマークしたものの、翌01年からは故障に苦しみ、03年オフに引退。翌04年を最後に近鉄は歴史に幕を下ろすが、このとき欠番だったのは、指導者の背番号を除けば永久欠番の「1」と、この「6」だけだった。

【近鉄】主な背番号6の選手
島方金則(1950〜51)
原勝彦(1954〜60)
安井智規(1967〜75)
石渡茂(1976〜83)
金村義明(1987〜94)
武藤孝司(2000〜03)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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