3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 野村監督のホームスチール
今回は『1972年6月12日号』。定価は100円。
初ではなかったが、南海の野村克也兼任監督がホームスチールを決め、話題になっていた。
「ワシは話題の提供者やな」と照れていたが、二刀流
スミスの先発などもあって、大阪球場の観客動員も前年を大きく上回っていた。
その野村監督が
門田博光にカミナリを落とした。
もともと「ヤツは若いのに珍しくプロ意識がしっかりしている」と言い、ほとんど怒ったことがなかったという。
門田は当時プロ3年目の24歳だったが、前年には打点王に輝き、南海の主力打者として活躍していた。
5月20日の東映戦(大阪)だった。一死一、二塁で門田がドラッグバントを試みたとき、野村監督は「恥ずかしいことをするな。なぜ本塁打を狙おうとせんのだ」と怒った。
不振が続き、この試合、六番に打順を落とされていた門田だが、このゲキに奮起。この試合2本塁打。
「弱気になるのが一番悪いということが分かった。もしあの打席で監督に怒られてクソ―ッという気持ちにならなかったらどうなっていたか分からない。カーッとなって強気で向かっていったのがよかった」
若手が監督に試合中に怒られたのだから、普通なら委縮しそうだが、逆にパワーに変えるのだからすごい。
野村監督も、
「あんなやつなら怒りがいがあるよ」
と話していた。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM