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背番号物語

【背番号物語】中日「#20」燦然と輝く20世紀のエースたち。2020年代に後継者は登場するか?

 

杉下は投手の「20」第1号


中日で初めて投手として背番号「20」を着けた杉下


 中日の背番号「20」といえば、その歴史に燦然と輝くエースナンバーの系譜。初優勝、そして日本一を飾ったのは1954年のことだが、ペナントレースではリーグ最多の63試合、395回1/3に投げまくって、同じくリーグ最多の7完封を含む32勝で自身2度目の最多勝、273奪三振もリーグ最多で、防御率1.39で初の最優秀防御率、3度目の沢村賞に初のMVPにも輝いた杉下茂が背負っていた背番号が「20」だった。

 ただ、もともとはエースナンバーどころか、投手の背番号でさえない。37年に背負った初代の三浦敏一は捕手で、チーム2代目の司令塔。翌38年に三浦は「9」に転じ、外野手の楠本政夫が着けたが、代打で1打席に立って凡退したのみ。39年シーズン途中に巨人から移籍してきて3代目となった岩本章も外野手で、43年には本塁打王に輝き、背番号の廃止と戦争によるプロ野球の中断を挟んで47年まで背負い続けたが、阪急(現在のオリックス)へ移籍した。中日の「20」で最初の投手が杉下だ。

 プロ野球で初めてフォークボールを使いこなした杉下。その“魔球”は「“神様用”のボール。それも絶体絶命のとき以外は放らない球でした」(杉下)という。“神様”とは巨人の「16」、“打撃の神様”川上哲治のことだ。西鉄(現在の西武)との日本シリーズでも5試合に登板して4完投で3勝、防御率1.38でMVPに輝いた杉下だが、フォークは見せ球と戦後のプロ野球で復興の象徴となった大下弘を打ち取るためにしか投げなかったという。だが、3勝3敗で迎えた疲労困憊の第7戦(中日)では球速を落としたフォークを初めて多投して日本一を呼び込み、ベンチに戻って涙。語り継がれる“涙の日本一”だ。杉下は指導者としても「20」を着けたが、61年に大毎(現在のロッテ)で1年だけ「20」で現役に復帰している。

杉下の後を継ぎ、61年から背番号「20」を着けた権藤


 ただ、杉下の去った中日で「20」に輝ける後継者が登場しなければ、「20」は杉下を象徴するナンバーに過ぎなかっただろう。61年に継承した権藤博の快刀乱麻が、中日の「20」に神話を築いた。2位に終わった中日が“権藤ドラゴンズ”と揶揄されたほど、権藤の孤軍奮闘は54年の杉下を凌ぐ。69試合、429回1/3の登板で32完投、うち無四球8、12完封を含む35勝に310奪三振、防御率1.70などでリーグトップ。権藤が投げていないのは雨と移動日だけと言われ、「権藤、権藤、雨、権藤」の流行語は決して誇張ではなく、新人王と沢村賞に輝いている。翌62年も30勝を挙げて2年連続で最多勝。だが、これが酷使だったのは明白で、その後は故障に苦しみ、打者に転向するなどしながら69年いっぱいで引退している。翌70年に新人で右腕の渡部司が継承したが、1年で「22」に。続く71年に「20」を背負ったのが3年目の星野仙一だった。

20世紀の終焉とともに急失速?


背番号「20」でマウンドから闘志あふれる投球を披露した星野


 星野は特に巨人戦では燃えに燃えた巨人キラー。82年のリーグ優勝を見届けて引退するまで第一線で投げ続け、「20」に中日のエースナンバーという印象を確固たるものにした。1年の欠番を挟んで継承した小松辰夫は“スピードガンの申し子”と呼ばれた速球派の右腕で、プロ7年目、「34」からの変更で、94年まで背負い続けている。やはり1年の欠番を経て「20」を着けたのは抜群の安定感を誇ったクローザーの“韓国の至宝”宣銅烈で、99年のリーグ優勝に貢献して退団した。

 だが、2001年にヤクルトからFAで加入した川崎憲次郎は故障に苦しみ、3試合の登板で引退。すぐに新人の中田賢一が後継者となり、3年目の07年には14勝も、13年オフには故郷の福岡に本拠地を置くソフトバンクへ移籍してしまう。1年の欠番を挟んでドラフト1位で15年に入団した野村亮介が継承したものの故障が続いて、3年で打撃投手に転じた。その後は欠番だ。振り返れば、中日が名古屋としてプロ野球に参加した1936年も、ありがちな「4」「13」などと並んで欠番だった中日の「20」。2020年代に入ってからも雌伏の眠りについたままだ。

【中日】主な背番号20の選手
岩本章(1939〜43、46〜47)
杉下茂(1949〜60)
権藤博(1961〜69)
星野仙一(1971〜82)
小松辰夫(1984〜94)
宣銅烈(1996〜99)
川崎憲次郎(2001〜04)
中田賢一(2005〜13)
野村亮介(2015〜17)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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