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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

震災から立ち上がる勇気を届けた2013年の楽天・田中将大

 

初の日本一に雄叫びを上げる


 東日本大震災発生から今年で10年。そして、東北に初の歓喜が訪れたのが、その2年後だった。震災から立ち上がるための元気と勇気を東北に届けた、星野楽天とエース・田中将大の2013年を今一度振り返ってみたい。

 田中将大によるこの年の進撃は、まさに神懸かっていた。「今年の野球界の主役は、俺たち楽天だ!」。2月の沖縄・久米島キャンプで高らかにこう宣言した右腕は、言葉どおりの、いやそれ以上の快投を見せる。

 とにかく負けなかった。8月9日のソフトバンク戦(Kスタ宮城)でプロ野球新記録となる開幕16連勝をマークすると、試合後のお立ち台では記録のことはそこそこに、「仙台も暑くなってきていますが、お酒の飲み過ぎに注意してください」と笑顔でファンに呼びかけ、大いに沸かせた。

 リーグ優勝を決めた9月26日の西武戦(西武ドーム)では、星野監督の「優勝したときの映像は一生残る」との計らいで、9回からマウンドへ。球団初の胴上げ投手となった。

「あの場にいられたことは、ものすごく感慨深いものがある。何度もテレビに流れて。やっぱりうれしい」

 だが、これがシーズン最高潮にならなかったところが、13年のイーグルスのすごいところだろう。田中は10月8日のオリックス戦(Kスタ宮城)で前人未到だった開幕から無傷の24連勝を達成。「1試合1試合集中してきた結果だと思います」。ポストシーズン、日本シリーズを見据えてか、喜びは最小限に留めているようだった。

 巨人との日本シリーズは3勝3敗で第7戦(Kスタ宮城)へ突入する。前日の第6戦で160球の熱投もむなしく、この年初めて敗戦投手となっていた田中だが、雪辱の機会はすぐに訪れた。3点リードの9回にリリーフとしてマウンドに上がったのだ。二死一、三塁のピンチを招いてしまうが、最後は宝刀スプリットで矢野謙次を空振り三振に仕留めてゲームセット。

 両腕を突き上げながら捕手・嶋基宏の元へ歩み寄った田中は「日本一になったぞー!」と笑顔で叫んだ。そして「この舞台を用意してくださったチームメート、ファンの方に感謝しながらマウンドに向かった。ホッとしましたよ」と繰り返した。

 数年前、田中が楽天球団を通じて寄せた震災に関するコメントが思い出される。

「震災直後に訪れた被災地の光景は今でも鮮明に覚えています。その震災の記憶を、しっかりと後世に伝えていく。風化させてはいけない。野球を通じてできること、一人の人間としてできることは限られているかもしれませんが、自分自身を成長させてくれた宮城、そして東北に、微力ながら貢献できればいいと思っています」

 節目の年、「背番号18」は再び仙台の地に戻ってくるか――。

写真=BBM
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