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後楽園球場が燃えた巨人─阪神首位攻防戦/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

不振に苦しむ王貞治


表紙は阪神田淵幸一



 今回は『1972年6月19日号』。定価は100円。

 1972年6月2日、巨人─阪神戦の後楽園には5万人が詰めかけ、久々の満員札止めとなった。球場外には入り切れぬファンが8000人ほど。入り口で「入れろ」「無理だ」と係員と客との押し問答が繰り返され、もみ合いの中でガラス窓が割れ、ケガ人も出たという。
 前年の不振もあってフラストレーションがたまっていた東京の虎ファンたちが、久々の首位争いで一斉に騒ぎ出したということのようだ。

 開幕から4連敗スタートと出遅れていた阪神だが、5月21日から破竹の10連勝。1位巨人、2位阪神での対戦で阪神が勝てば首位交代。しかも互いに巨人・堀内恒夫、阪神・江夏豊のエースの先発とあれば、この熱狂も当たり前だろう。
 試合は3対1で阪神が勝ち、首位交代も果たした。
 阪神のヒーローは2本塁打を放った田淵幸一、隠れたヒーローが2度の好守備を見せたセンターの池田純一だった。
 敗れた巨人・川上哲治監督も、
「いま売り出し中の田淵が2本もホームランを打ったんだし、エース同士もよく投げた。お客さんも満足してくれたんだから、私としは何も言うことはない。
 うちも江夏をよく攻めたんだが、池田の2つのファインプレーに阻まれた。これが面白い野球です」
 と笑顔で話していた。

 表情が暗かったのが、王貞治だ。
 7回裏、満員の客席がどよめいたのは、王の送りバントの構えだった。しかし、失敗し、その後、センターへの大飛球も池田の好捕に阻まれた。
「相手が江夏で、僕の調子がよくない。同点で、どうしても1点がほしいときと条件がそろっていましたからね。でも、慣れないことで失敗した」
 淡々と振り返った王。500号まであと2本に迫りながら、深刻な打撃不振に苦しんでいた。

 巨人は翌戦に6対1で快勝。阪神は1日天下に終わった。
 試合後、長嶋茂雄は一言。
「やられたらやり返す、それでいいじゃないか!」

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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