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背番号物語

【背番号物語】広島「#15」広島で3番目の永久欠番は初の投手。功労者のフィナーレとスタートも

 

源流には歴戦の強打者も


黒田が背負っていた「15」は広島の永久欠番となった


 21世紀に入って初めて、引退したばかりの選手の背番号が永久欠番になったのは2016年オフのこと。広島を25年ぶりのリーグ優勝に導いてユニフォームを脱いだ黒田博樹の「15」だ。広島の永久欠番では、20世紀の黄金時代を築いた山本浩二(浩司)の「8」、衣笠祥雄の「3」に続くもの。この当時は“投手王国”と呼ばれた広島だったが、投手の背番号としては初めての永久欠番であり、もちろん21世紀の広島では初めてのことだった。

 黒田は1997年に入団。当時のドラフトでは大学生と社会人は意中の球団を“逆指名”することが可能で、専大からプロ入りした黒田も広島を“逆指名”したものだ。1年目から「15」を背負った黒田は、初登板初完投勝利のデビュー。初の2ケタ勝利は2001年の12勝だが、リーグ最多の13完投も。投手分業制が完全に定着した時代に“ミスター完投”の異名を取った。05年には自己最多の15勝で最多勝、FAの権利を取得した翌06年には防御率1.85で最優秀防御率。オフにはファンのラブコールもあって残留、あらためて07年オフにFA宣言、ドジャースへ。12年にはヤンキースへ移籍して、15年に広島でプロ野球に復帰する。

 この間、広島の「15」は欠番。そして、ふたたび「15」は40歳となった黒田の背中で輝く。15年は11勝、16年は10勝。数字もさることながら、その存在こそが若い選手が多い広島には大きなものだった。結果的に21世紀の広島で「15」を背負ったのは黒田ただ1人。21世紀に生まれた若いファンにとっては当然だが、20世紀を知るファンにも、広島の「15」といえば黒田かもしれない。ただ、低迷期の暗黒も黄金時代の輝きも存在した広島の歴史。それぞれの時代に「15」は投打の功労者が背負い、そしてリレーしていったナンバーだ。

 プロ野球が始まった36年からプレーしていたレジェンド左腕で、5チーム目となる広島の結成に参加した内藤幸三が初代。そこから投手の斎藤宗美、内野手の野田誠二と小刻みにリレーして、53年に小鶴誠が継承した。小鶴もチームを転々とした歴戦の強打者で、50年のシーズン161打点は現在に至るまでプロ野球の頂点に立ち続けているが、広島では腰痛もあり本領を発揮できず。それでも移籍1年目から全試合に出場、低迷する広島で四番打者を務めて、3年連続4位という健闘を支えている。

 小鶴の引退で「15」は投手の背中に戻り、59年に井洋雄、62年には西村宏、63年に蔦行雄、64年に森川卓郎とリレー。68年には阪神から移籍してきた内野手の朝井茂治が着けたが、70年の中村光哉から投手の背番号に戻り、73年から川畑和人、77年に門田純良、78年には下地勝治とリレーして、80年に阪神を経て復帰した安仁屋宗八が継承。64年に広島でキャリアをスタートさせたときには“沖縄の星”と呼ばれた安仁屋は68年に「16」で23勝も、初優勝を前に放出された低迷期の功労者だったが、すでにベテラン、さらに満身創痍となっていて、1勝もできないまま2年で引退。82年、「15」を継承した右腕が、広島の黄金時代を強固なものにすることになる。

“炎のストッパー”のブレークナンバー


入団から3年間、「15」を背負っていた津田


 相思相愛の広島からドラフト1位で指名され、82年に「15」を背負ったのが津田恒美(恒実)だった。1年目から11勝を挙げて、広島で初めてとなる新人王に輝く颯爽デビュー。ただ、その後は故障もあって精彩を欠き、85年には「14」に変更、翌86年からはクローザーとして真価を発揮する。もちろん、津田の全盛期は「14」時代で、これについて詳しくは機会を改めるが、かつての功労者から受け継がれた「15」でブレークした津田の登場は、系譜におけるエポックだった。

 その85年から「15」は外野手で5年目の松林和雄が着けるも、一軍デビューは「55」に変更した88年。「15」は投手の背中に戻り、片瀬清利(聖敏)が継承したが、ブレークは7勝を挙げた92年で、広島が20世紀で最後のリーグ優勝を飾った翌年のことだ。ふたたび低迷していく広島を支えた片瀬も96年オフに阪神へ。そして97年、「15」を背負ったのが黒田だ。もちろん、黒田も広島の功労者。その最初と最後も、もちろん「15」だ。

【広島】主な背番号15の選手
小鶴誠(1953〜58)
安仁屋宗八(1980〜81)
津田恒美(1982〜84)
片瀬清利(1988〜95)
黒田博樹(1997〜2007、15〜16)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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