週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】楽天「#18」田中将大、復帰。楽天の背番号18はエースナンバーか、あるいは田中の象徴か?

 

エースの背番号とエースナンバーの系譜


楽天入団1年目の07年から背番号「18」を着けた田中


 2020年までヤンキースでプレーしていた田中将大が楽天へ復帰することが発表された。背番号は、もちろん「18」。07年に楽天でプロのキャリアをスタートさせた田中が、13年までの7年間、背負い続けたナンバーだ。

 06年の夏、駒大苫小牧高のエースとして早実の斎藤佑樹(現日本ハム)と決勝戦で投げ合い、引き分け再試合の熱投を見せた田中は、高校生ドラフト1巡目で翌07年に入団すると、高卒ルーキーながらプロ1年目に11勝を挙げて新人王に。09年には15勝を挙げて初のAクラス進出に貢献、東日本大震災のあった11年には19勝、勝率.714、防御率1.27で最多勝、最高勝率、最優秀防御率に加え、沢村賞にも輝いた。13年は、まさに無敵。最多奪三振を除く先発投手タイトルを総ナメにしたこともさることながら、無傷のシーズン24連勝は20世紀にもない快挙だった。これで楽天は創設8年目にして初のリーグ優勝、さらには日本一にも。そのオフに田中は海を渡り、メジャーでも活躍する。この間、楽天の「18」は欠番が続いていた。

 プロ野球のエースナンバーとして、多くの人が真っ先に思い浮かべるであろう「18」。プロ野球で「18」がエースナンバーとされるようになったのには諸説ある。一般的に「十八番」といえば、もっとも得意とする芸、得意技、といった意味で、「おはこ」とも読み、その由来は歌舞伎にあるという。背番号「18番」がプロ野球の世界でエースナンバーとされるようになったのも、この「十八番」に起源があるとも言われる。ただ、有力なのはV9が始まった巨人藤田元司から堀内恒夫が継承したことで他のチームに伝播していったという説だ。

 とはいえ、チームの「もっとも得意な」投手、つまりエースが「十八番」であることは、日本人に親しみやすかったのも間違いないだろう。実際、メジャーにはエースナンバーが「18」という意識はないという。ちなみに、エースと呼べる存在の投手が「18」を着けた最初は、1934年に大リーグのスター選手を招いて開催された日米野球で、早大で名を轟かせた伊達正男が「18」を背負って投げたときにさかのぼる。ただ、このときは日本にも「18」がエースナンバーという意識はなかったという。やはりエースからエースへと受け継がれることで、初めてエースナンバーの系譜が成立するものなのだろう。

 この連載ではDeNAの「18」は紹介しているが、これもエースナンバーというより、21年から監督として指揮を執る三浦大輔が選手として苦楽をともにした象徴的な背番号であり、DeNAいわく“横浜ナンバー”。これがエースナンバーとして成立するためには次に背負う投手の背中に懸かっている。エースからエースへの継承がエースナンバーの前提条件ものだとしたら、楽天の「18」もエースナンバーとは言い難い。プロ1年目から「18」を与えられた田中だったが、その07年は楽天がプロ野球に参加して3年目となるシーズン。いかんせん歴史が浅い楽天にあって、「18」を着けた選手は2人しかおらず、田中は2代目の「18」だ。

初代は「34」で開花


楽天の初代「18」だった渡邉


 初代の渡邉恒樹はドラフト2巡目、当時のドラフトに存在した自由獲得枠で楽天とともにプロの道を歩み始めた左腕。東農大、NTT東日本でプレーしていた渡邉にとっては27歳を迎えるシーズンであり、プロの道を歩み始めたのは他と比べて遅い部類に入る。1年目は17試合に登板して1勝。防御率1.93は安定感のある数字だ。2年目は15試合の登板で、勝ち星はなかったものの、防御率3.06と、決して悪い数字ではない。悪戦苦闘の楽天にあって上出来とも言えそうだが、規定投球回には遠く届かず、田中の入団で「34」に変更となった。左腕エースの印象が強い「34」を背負った渡邉はセットアッパーとして開花。10年シーズン途中にヤクルトへ移籍して「48」となり、12年までプレーを続けている。

 広島で同じくメジャーから復帰した黒田博樹の「15」は永久欠番となり、その系譜は幕を下ろした。一方、田中の活躍で楽天の「18」がエースの背番号となったことは確かだが、どんな偉大なエースでも1人で系譜を築くことはできない。楽天の「18」には、どんな未来が待っているのか。物語は始まったばかりだ。

【楽天】背番号18の選手
渡邉恒樹(2005〜06)
田中将大(2007〜13、21〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング