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走りまくる阪急・福本豊、狙いは「100盗塁」だ!/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

東映戦で盗塁数を稼ぐ


阪急・福本豊



 今回は『1972年6月19日号』。定価は100円。

 以前、開幕から走りまくっていた南海のベテラン、広瀬叔功の話を書いたが、故障で欠場。その無人の野を一人で疾走していたのが、阪急の福本豊だった。
 6月1日現在で、早くも28盗塁。広瀬の20を大きく引き離した。ただ、「なぜ、そんなに盗塁ができるのか」と聞くと、
「足に聞いてください。走ろうと思うと、ブレーキがきかなくなるんですよ」
 と、いつものようにとぼける。

 この年、特にカモになっていたのが東映だ。阪急から移籍1年目の岡村幸治は5回盗塁を許し、1度も刺せず、加藤も3回盗塁を許し、1度も刺せず。5月3日には捕手・岡村で1試合5盗塁をやられた。うち3盗塁の投手・高橋直樹は、
「あまりに速いので手の施しようがなかった。もう走るなら走れという気持ちだった。まるで風のような男ですよ」
 とあきれ顔。
 一方、岡村は記者に何を聞かれても返事をしなかった。

 実は福本、前年は東映戦で20盗塁しているが、盗塁死も8と多かった。このうち6個を刺したのが、岡村の代わりに阪急に来た種茂雅之である。
 思わぬ移籍効果とも言えるし、そもそも67盗塁のうち20盗塁って何? とも思う。

 4回走られ、一度も刺していない南海・野村克也が言う。
「福本には随分走られている。しかし盗塁を殺すのは、捕手の責任とばかりはいえんだろ。なんと言っても投手の速いモーションとけん制のうまさが求められる」

 盗塁増の秘密は三盗にあった。前年は67盗塁のうち5だが、この年は28のうち8個が三盗だった。
「広瀬さんが三塁に走っているタイミングを外野から見て、これだなと思いました。それで、広瀬さんがやるんだから俺もと思ったんです」

 福本がこの年(130試合制)掲げていた目標は「100盗塁」だが、当時の日本記録は阪急・河野旭輝の85。河野は、このときはヤクルトのコーチだった。
「相手の捕手がもちろん敵だが、福本の力からすれば、敵はケガだ。そのケガをしないことが先決だろう。チャンスは1シーズンしかない。2度とないものと思って走ってほしい」
 話が先走るが、結局、福本の100盗塁超えは、この年だけだった。先輩韋駄天には何か予感があったのか。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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