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背番号物語

【背番号物語】門田博光「#44&#60」独特なこだわりを持つ567本塁打の大砲。背番号に託したものとは?

 

「27」でブレークしたものの……


南海・門田博光


 プロ1年目の背番号は運に左右される面も大きく、近年は、といっても時代が平成になってからだが、1年目の大きな背番号を自身の象徴に昇華させる選手も少なくない。それでも、選手が主力に定着し、実績を残していくにつれて、その背番号は小さくなり、それが固定されていく傾向は、まだまだ一般的だ。その背番号が、選手の引退によって継承されることによって背番号の物語は紡がれていく。ただ、この傾向から外れている名選手も少数派ながら存在する。

 移籍によって背番号の変更を重ねた江夏豊については紹介したばかりだが、移籍による変更は名選手といえども運が影響してくるもの。一方で、その南海(現在のソフトバンク)でのチームメートだった門田博光は、こうした背番号の世界では異例の中の異例といえる存在だ。長く南海の主砲として「トラックの上でミサイルを発射させる発射台」(門田)という独特な一本足打法から本塁打を量産して門田ならば、たとえば同じく一本足で通算868本塁打を残した巨人王貞治と同じ「1」を要求すれば、かなえられる可能性もあったかもしれない。だが、門田は逆に、どんどん背番号を大きくしていった。

 ちなみに、古くからブレークした背番号に戻す傾向は多く、最近はベテランとなってから最初の背番号を着けて引退する傾向も近年は増えてきたが、門田は2度と同じ背番号を着けることもしていない。背番号が永久欠番になっていないレジェンドの1人でもある門田だが、そのカテゴリーでも、ひときわ異彩を放っている。

入団当初は「27」を着けていた門田


 門田はドラフト2位で1970年に入団して、「27」でキャリアをスタート。この当時の「27」には名選手を輩出する出世ナンバーという横顔もあり、広島では山本浩二(浩司)が「27」で1年目から活躍、投手でも2番目の背番号ながら大洋(現在のDeNA)の平松政次が「27」で長くエースとしてチームを支えている。門田も2年目から三番打者として120打点で打点王に輝いてブレークした。その後も安定した活躍を続けた門田だったが、79年の開幕を前に、キャンプで右足アキレス腱を断裂。当時は選手生命も危ぶまれる重傷だった。

アキレス腱断裂から「44」に背番号を変えて復活


 運命は一転。ただ、暗転したわけではなかった。もともと本塁打に魅了されていた門田は、従来のような全力疾走ができなくなったことから、目標を本塁打に一本化する。翌80年には新たに「44」を背負って復活。日本人の選手には避けられがちな「44」だが、この数字は門田にとって、シーズン本塁打の目標だった。その80年は41本塁打で、初めて40本塁打の大台には乗せたが、わずかに目標には届かず。それでも続く82年には初の本塁打王に輝く44本塁打を放って、わずか2年で目標を達成してしまった。だが、その翌83年は19本塁打と急失速。これで門田は再度、背番号を変更する。ファンにとっては門田の復活を象徴する「44」だが、3年で役割を終えた。

移籍でも背番号を変更


南海時代の83年から88年までは背番号「60」に


 門田が新たに背負ったのは「60」。門田にとっての背番号は自身を象徴するようなものではなく、本塁打の目標なのだから、大きくなっていくのは自然のことだった。「60」1年目の83年は40本塁打で2度目の本塁打王に。40歳で迎えた88年にはキャリア初の全試合出場で44本塁打、125打点。3度目の本塁打王、2度目の打点王で、初の打撃2冠に輝くキャリアハイを迎える。

オリックスでは「78」を背負った


“不惑の大砲”が流行語にもなったシーズンだったが、これが南海のラストイヤー。チームはダイエーに、本拠地は福岡に。家庭では子煩悩な父親で、転居を嫌がった門田は、同じく阪急から生まれ変わったオリックスへ移籍する。初めての移籍でも背番号を変更した門田は「78」に。このときから新たな背番号は易者の占いで決めるようになったという。この「78」は当時も指導者の背番号だが、他のチームでは「78」に同世代のコーチもいそうな中で、門田は現役バリバリ。91年に“古巣”のダイエーへ移籍したときも背番号を変更して「53」に。現役23年目にして初めて背番号が小さくなった(それでも「53」だが……)。

最後はダイエーで「53」を背負い引退した


 門田は「53」でも2年間プレーして引退。最終的に通算567本塁打を残した。

【門田博光】背番号の変遷
#27(南海1970〜79)
#44(南海1980〜82)
#60(南海1983〜88)
#78(オリックス1989〜90)
#53(ダイエー1991〜92)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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