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背番号物語

【背番号物語】ヤクルト「#27」“強肩強打”古田敦也が完成形の捕手ナンバー。後継者への高いハードル

 

系譜で最初の捕手は金田の“正妻”


“ID野球の申し子”としてヤクルトで「27」を背負い続けた古田


 ヤクルトは2リーグ制となった1950年に参加した国鉄が起源だ。国鉄とは日本国有鉄道の通称で、簡単にいってしまうと現在のJRなのだが、いわゆる分割民営化があったのは昭和の最後のほうだから、21世紀どころか平成に生まれた若い読者にはリアルタイムの言葉ではないはずだ。プロ野球が始まった36年から阪神など民間の鉄道会社が親会社として球団を経営していたが、2リーグ分立を機に比較にならない全国規模の鉄道会社がプロ野球に参入したことになる。

 三大都市圏ではない地域の知名度は抜群。地方への遠征では他のチームを圧倒する人気を誇ったという。このときからニックネームはスワローズ。由来は特急「つばめ」だ。ただ、お役所らしいというか、参入に向けての動きは飛燕どころか後手に回り、各地の鉄道局から慌てて戦力を整えたものの、当然、低迷する。優勝と無縁のままチームは60年代に変転を重ね、ヤクルトスワローズとなったのが74年で、78年には初のリーグ優勝、日本一に。90年代にはリーグ優勝4度、日本一3度の黄金時代を築いた。

 紆余曲折の多かったチームではあるが、背番号の系譜ではブレることが少ないヤクルト。いくつかの背番号は明確なイメージに沿って継承されている。そんな中で、もっとも歴史が古いのは「27」だろう。絶対的な司令塔がリレーしてきた捕手ナンバーだが、兼任監督だった古田敦也が引退した2007年を最後に欠番が続く。野村克也監督の下で、“ID野球の申し子”とも呼ばれた古田。ドラフト2位で90年に入団、1年目から「27」を背負って即戦力となり、抜群の強肩で新人の捕手で初めてのゴールデン・グラブに。翌91年に初の規定打席到達で打率.340をマークして首位打者、続く92年には自己最多の30本塁打など、強打も魅力だった。野村監督に「三流」とボヤかれたリードも着実に成長。当時のヤクルトを象徴する存在であり、当時のプロ野球を牽引する捕手でもあった。

根来(左)−金田(右)のバッテリー


 初めて捕手が「27」を背負ったのは、まだチームが国鉄だった58年。「37」の投手だった根来広光が捕手に転向し、欠番だった「27」となったものだ。この58年から根来はレギュラーに定着。永久欠番の「34」で紹介した金田正一の投球をノーサインで受けるなど、その“正妻”として多くの勝利に貢献していく。金田が65年に巨人へ移籍すると、その「34」は金田の印象を払拭する方向へと進んでいったが、根来が67年に阪急(現在のオリックス)へ移籍してからも「27」は捕手がリレーしていく。後継者は新人の加藤俊夫だった。このときのチーム名はサンケイ。2年目の68年からレギュラーとなった加藤だが、70年の交通事故でオフに解雇され、東映(現在の日本ハム)へ。翌71年、新たに後継者となった捕手が、ヤクルトの「27」に絶対的な捕手ナンバーのイメージを定着させていく。

2代目はスワローズ初の本塁打王


古田の前に捕手で背番号「27」を着けていた大矢


 ヤクルトの「27」で3人目の捕手は2年目の大矢明彦。ドラフト7位と下位での指名だったが、強肩を武器に即戦力として機能して、「32」から変更したものだ。この1年目の盗塁阻止率.568は古田の1年目をしのぐ数字。打撃では安定感にかけたが、その一方で守備率は安定して高く、78年には右手甲骨折が完治しないまま出場を続けて、ヤクルトを初優勝、日本一へと導いている。大矢は85年までプレーし、翌86年から「27」は欠番に。89年シーズン途中に加入した投手のデービスが着ける“脱線”もあったが、デービスはオフに退団。その後継者が古田だ。

 ただ、この「27」も最初は外野手の系譜だった。初代の荻島秀夫は貴重なプロ経験者で、50年は91試合に出場したが、1年で引退。欠番を挟み、52年に2代目となったのが外野手の町田行彦だ。持ち味は“バカ肩”ともいわれた強肩だったが、しだいに長打力が備わっていく。55年には31本塁打で本塁打王に。チーム初の本塁打王だ。だが、57年に「7」となった町田は故障もあって精彩を欠くようになり、55年がキャリアハイとなった。

 強肩と強打。これを兼ね備えた古田が「27」の完成形にも見える。その後継者を待っている形だが、ハードルは高い。

【ヤクルト】主な背番号27の選手
町田行彦(1952〜56)
根来広光(1958〜66)
加藤俊夫(1967〜70)
大矢明彦(1971〜85)
古田敦也(1990〜2007)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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