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背番号物語

【背番号物語】ヤクルト「#1」受け継がれる“ミスター・スワローズ”の系譜。通算打率トップ3に2人を輩出

 

多彩な好打者たち


初代“ミスター・スワローズ”の若松


 永久欠番になることなく継承が繰り返されることは、背番号の物語としてはシンプルかつ分かりやすく、これ以上ないもの。ファンは選手が引退しても、後継者の登場に希望をつなぐことができるからだ。背番号の系譜において、明確な継承がされていることに関してはプロ野球でも屈指のヤクルト。「27」は古田敦也を最後に欠番が続いているが、ほとんど途切れることなくチームの筆頭といえる打者がリレーしているのが「1」だ。ヤクルトの「1」は“ミスター・スワローズ”の証明。それぞれタイプは異なるが、系譜にも球史に残る好打者が並んでいる。

【ヤクルト】主な背番号1の選手
若松勉(1972〜89)
池山隆寛(1992〜99)
岩村明憲(2001〜06)
青木宣親(2010〜11)
山田哲人(2016〜)

 ヤクルトの「1」を“ミスター”の看板に昇華させたのは若松勉。当時はプロ野球選手が少なかった北海道からドラフト3位で1971年に入団。公称は身長168センチだが、実際は166センチしかなかった小さな体で、プロとしてプレーすることには不安もあったという。その1年目に与えられたのも「57」。近年は傾向も変わりつつあるようだが、当時は一般的に、1年目に大きい背番号を与えられるのは「期待していない」という意味も含まれていた。だが、若松は1年目から外野のレギュラーに定着。あらためて2年目の72年に「1」を背負って、打率.329で首位打者に輝いた。

 77年にはリーグ最多の158安打を放ち、巨人張本勲とのデッドヒートを制して打率.358で2度目の首位打者に。翌78年も打率.341で初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献して、MVPに輝いている。その後は打撃タイトルこそなかったものの、ほとんどのシーズンで打率3割を突破。89年までプレーを続け、4000打数を超える打者では歴代3位の打率.319を残した“小さな大打者”だ。

“ブンブン丸”の異名を取った池山も背番号「1」を着けた


 若松の引退により2年の欠番を挟み、92年に継承したのが池山隆寛。左の巧打者だった若松とは対照的に、“ブンブン丸”の異名を取った右の長距離砲だ。池山は「36」で主砲として実績を積み、プロ9年目に変更。その92年に14年ぶりリーグ優勝を果たしたヤクルトは、そのまま黄金時代へと突入していった。若松監督がリーグ優勝、日本一に導いた2001年から「1」を背負ったのが岩村明憲。若松と同じ左打者だが、池山に負けずとも劣らないフルスイングのスラッガーで、4年目に「48」から変更したものだ。

 続いて10年に「1」を継承したのが青木宣親。若松と同じ左の外野手で、2年目の05年に「23」でブレークすると、「1」1年目の10年に3度目の首位打者に輝いた。そして16年から現在に至るまで「1」は山田哲人の背中にある。山田は「23」でも青木の後継者で、プロ6年目の変更。ただ、“ミスター・スワローズ”よりも“ミスター・ヤクルト”という顔ぶれなのも事実だ。だが、国鉄としてプロ野球に参加した1950年から、伏線は張られていた。

3人が原点回帰


現在、ヤクルトの背番号「1」を着けている山田


 初代「1」の井上親一郎は初代の主将で、50年から53年まで。2代目の宇野光雄は55年までの2年間だったが、56年には監督も兼任した中心選手だった。その56年からは正二塁手の佐々木重徳が5年間、正遊撃手から正二塁手に転じた杉本公孝が5年間。1年の欠番を挟んで67年に継承した奥柿幸雄は“王貞治(巨人)2世”と期待された左打者だったが、結果を残せず4年で引退。これによって後継者となった若松は「1」の6代目となる。

 この若松から“ミスター”の系譜となった「1」だが、後継者たちが「1」から離れるのも特徴だ。若松と同様、ヤクルトひと筋を貫いた池山だが、岩村に「1」を譲って「36」に戻し、2年間プレーして引退。岩村と青木はメジャーへ活躍の場を移した。ただ、岩村は楽天を経てヤクルトへ復帰して「48」に、青木は2018年にヤクルトでプロ野球へ復帰、山田が「1」となって欠番だった「23」に、それぞれ原点回帰、現時点で「1」のまま引退した“ミスター”は若松のみ。ヤクルトの「1」で初の盗塁王にも輝いた山田の活躍は今後も続きそうだ。

 ちなみに、長く通算打率2位だった若松が3位に転落したのは、青木が1位に躍り出たため。日本人の選手では1位と2位にヤクルトの「1」が並んでいることになる。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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