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背番号物語

【背番号物語】ヤクルト「#23」青木、山田、そして青木。最強の出世ナンバーには監督を務めた鉄人も

 

「1」前夜の両雄


04年のヤクルト入団時から背番号「23」を着け、ブレークした青木


 ヤクルトの「1」については紹介したばかりだが、“ミスター・スワローズ”の看板といえる背番号に2人を送り出しているのが「23」だ。2018年にメジャーから復帰してから「23」を背負い続けている青木、そして現役の「1」でもある山田哲人。ともに最多安打と盗塁王のタイトルは獲得しているものの、青木は左打者で外野手、山田は右打者で内野手と属性も異なり、打者のタイプも違うが、いずれも甲乙つけがたい好打者だ。ヤクルトに限らず、プロ野球には出世ナンバーとされる背番号は少なくないが、こうした出世ナンバーの中にあっても、このヤクルトの「23」は群を抜いている。

「23」の先輩も、もちろん青木。ドラフト4巡目で04年に入団して、「23」を背負った。1年目は二軍がメーン。2年目の05年に開幕を一軍で迎えると、序盤は低調だったが、「1」の大先輩でもある若松勉監督が我慢して使い続けた結果、中盤からリードオフマンに固定され、安打の量産体制に入る。最終的にはプロ野球2人目、セ・リーグでは初めてシーズン200安打を突破する202安打。もちろんリーグ最多安打であり、打率.344で首位打者にも輝いた。

 翌06年は2年連続の首位打者こそならなかったものの、192安打で2年連続の最多安打、41盗塁で初の盗塁王に。その翌07年には打率.346で首位打者に返り咲き、「1」に変更した10年にも209安打、打率.358で3度目の首位打者に輝いた。11年オフにポスティングでメジャーへ。18年に復帰して「23」に戻すと、通算打率の“規定打数”となる4000打数を超えて、歴代トップに躍り出た。

青木の「23」を継承した山田は4年目に最多安打を獲得するなど飛躍した


 一方で、ドラフト1位で11年に入団して、青木が「1」に変更したことで空いた「23」を1年目から背負ったのが山田だ。ブレークは4年目。その14年の山田も、まずは193安打で最多安打。翌15年には34盗塁で盗塁王に輝いたが、2年連続で打率3割は超えたものの、首位打者には届かず。ただ、38本塁打で本塁打王に輝き、トリプルスリーも達成。「1」に変更した16年にも2年連続で、さらに18年にもトリプルスリーを達成した。トリプルスリー3度はプロ野球記録だ。

 こうした2人の大活躍により、ヤクルトの「23」は異彩を放つナンバーとなったが、系譜を国鉄だった時代にさかのぼると、源流にも「23」の好打者がいる。

国鉄で1246試合連続出場


国鉄で背番号「23」を着けた飯田。通算1978安打をマークした大打者だ


 初代から外野手の山口礼司、捕手の木下雅弘(茂)、戦前から活躍する内野手で、2チーム目の大洋(現在のDeNA)で着けていた「23」のまま移籍してきた安居玉一、捕手の松橋義喜と、短期間でリレー。そして5代目、南海(現在のソフトバンク)から57年に移籍してきた一塁手の飯田徳治によって「23」が輝きを増す。

 南海でも「23」で黄金時代を支えた飯田は打点王2度の強打者で、すでにプロ11年目のベテランながら、移籍1年目に40盗塁で初の盗塁王に。これで6年連続で40盗塁を突破。翌58年に途切れるまで1246試合連続出場という鉄人でもあった。飯田は63年までプレーを続けて指導者に転じ、66年から67年までサンケイとなったチームで監督を務めたが、退任まで「23」を背負い続けている。

 その後の系譜は安定しなかった。68年に飯田の後継者となった投手の簾内政雄は引退までの9年間を「23」で過ごしたが、77年からは外野手のリレーとなり、巨人から移籍してきた槌田誠が1年、ドラフト1位で入団した柳原隆弘が5年、広島から来た萩原康弘が1年。84年に投手の酒井圭一が「18」から変更、90年まで背負って投手の印象が強くなり、ユーティリティーの石橋貢を挟んで92年から投手の増田政行(康栄)が継承した。だが、98年から白井康勝バチェラーが1年ずつ、藤井秀悟戎信行が2年ずつと長続きせず。戎の移籍で空いた「23」を継承したのが1年目の青木だった。

 今後しばらくは青木の「23」、山田の「1」が続くだろう。「23」は青木の象徴となるのか、“ミスター”の出世ナンバーとして定着していくのか、あるいは“ミスター”のフィナーレをも飾るのか。「23」の監督という可能性も残る。この物語を見届けるには長い時間が必要だ。

【ヤクルト】主な背番号23の選手
飯田徳治(1957〜63)
酒井圭一(1984〜90)
増田政行(1992〜97)
青木宣親(2004〜10、18〜)
山田哲人(2011〜15)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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