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背番号物語

【背番号物語】巨人「#6」やはり落合博満がエポック? ワキ役から主役の背番号になった“出世ナンバー”

 

V9の名ワキ役


巨人移籍2年目から背番号「6」を背負った落合


 背番号の物語において、出世ナンバーといえば、小さい背番号となった選手たちがブレークしたときに着けていた大きい背番号を指す。小さい背番号はレギュラーの選手たちが着ける傾向は古くから根強く、特に1ケタの背番号を、この意味で出世ナンバーと呼ぶことはない。この点、巨人の「6」は異色だ。1ケタの小さい背番号で、もともとレギュラーの選手が着けることが多かったものの、名ワキ役という印象が強かったナンバー。V9という空前絶後の黄金時代の、いわゆるV9戦士で、結婚式のスピーチで川上哲治監督に「これからも徹底してワキ役になってほしい」と言われてしまったのが土井正三だが、そんな名脇役がプロ1年目、V9の幕が開けた1965年から背負ったのが「6」だ。

名ワキ役としてV9巨人を支えた土井も背番号は「6」


 1年目は遊撃を守ることも多かったが、肩を痛めて二塁に回って、打順も二番。犠牲バントはトレードマークで、「6」に名ワキ役というイメージが定着していった。もちろん当時の“主役”は王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」だ。この“ON”が引退して、「3」が永久欠番となり、「1」のまま王が助監督、監督を歴任したことで、「6」の存在感は相対的に大きくなっていった。

 プロ野球が始まる前年、巨人が大日本東京野球倶楽部だった35年には、巨人の「4」で触れた永沢富士夫が「6」を着けていた。迎えた36年に永沢が「4」に変更したことで、巨人の「6」は、のちに川上の背中で永久欠番になる「16」とともに、プロ野球“元年”を欠番で迎える。川上と同期で38年に入団した岩本章が“初代”となるが、翌39年シーズン途中に名古屋(中日)へ移籍。1年の空席を挟み、沢村栄治の「14」を戦後に着けた貴重な存在でもある坂本茂が41年から43年まで背負った。

 戦後は投手の諏訪(高野)裕良が2年、2年の欠番を挟んで、捕手の藤原鉄之助が2年。諏訪は巨人から移籍してキャリアハイを迎え、藤原は正捕手を担ったものの巨人へ加入する以前の輝きには届いていない。藤原の移籍で52年にハワイから来た捕手の広田順が後継者となって黄金時代に貢献、53年から3年連続ベストナインも、5年で帰国。その後も定着せず、57年に捕手の棟居進、59年に外野手の加倉井実、60年から2年間は捕手と外野手を兼ねた佐々木勲と、短期間のリレーとなる。「6」2年目の63年に外野のレギュラーをつかんだ外野手の池沢義行も、翌64年の死球禍で失速した。その後継者が土井だ。その土井の引退を受けて後継者となった二塁手によって、巨人の「6」は印象を変え始める。

ヒットメーカー今昔


巨人屈指の巧打者だった篠塚は4年目から背番号「6」に


 プロ4年目の79年に「37」からの変更で新たに「6」を背負ったのが篠塚利夫(和典)だ。天才的な打撃センスで首位打者2度のヒットメーカーで、80年代の巨人を象徴する打者の1人となる。その篠塚の引退で、95年に満を持してトレードマークの「6」に変更したのが移籍2年目の落合博満だ。これで印象が一変。97年には近鉄から加わった石井浩郎に継承され、主砲のイメージが強くなっていく。

 2000年に“世界の犠打王”川相昌弘が後継者となって生え抜きの名ワキ役という印象に戻りかけたが、ダイエー(現在のソフトバンク)で四番打者を務めていた小久保裕紀が04年に移籍してきた着けたことでリバウンド。07年には移籍2年目の小坂誠が「2」から変更して、移籍で加入した名選手のイメージが定着しかけた。もともとはワキ役タイプだった背番号が、落合という強打者の加入で主役の座に就いたことによって、系譜の混乱が始まってしまったといえるかもしれない。

 そんな迷走にピリオドを打ったのは、やはり現役の坂本勇人だろう。プロ3年目の09年に「61」から変更すると、そこから「6」とともに大きな存在となっていく。去る20年には通算2000安打に到達したばかり。打線に欠かせない中軸であり、他チームからの補強が多い巨人で貴重な生え抜きでもある。紛れもなく“主役”といえる存在だ。かつては名ワキ役の勲章だった巨人の「6」は、紆余曲折を経て主役の象徴に進化を遂げた。背番号そのもののイメージが“出世”した、という意味での“出世ナンバー”といえそうだ。

【巨人】主な背番号6の選手
広田順(1952〜56)
土井正三(1965〜78)
篠塚利夫(1979〜94)
川相昌弘(2000〜03)
坂本勇人(2009〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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