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強肩・大矢明彦の殺しのテクニック「弱肩を努力で克服」/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

圧巻の阻止率


ヤクルトの大矢



 今回は『1972年7月10日号』。定価は100円。

 6月18日、後楽園の巨人─ヤクルト戦ダブルヘッダーの2試合目だった。
 5回裏、先頭の柴田勲が出塁。投手の簾内政雄王貞治に投じた3球目、二盗を企てた。王も空振りで援護、柴田の足なら悠々セーフのはずだった。
 ところが捕手の大矢明彦がすぐさまセカンドへ矢のような送球。セカンドの東条文博は「ピッチャーがモーションを盗まれてた。もうダメだと思ったよ」と言うが、大矢の送球は柴田が滑り込んでくる足元に絶妙のコントロール。捕って少し下げるだけでアウトにできた。
 柴田はこれで対大矢に6回挑戦し、5回の失敗。
「とにかくコントロールのよさは天下一品。12球団の捕手の中では一番いいんじゃないの。あれじゃ、いくら投手のモーションを盗んでもダメだよ」
 6月19日時点でリーグトップの19盗塁の怪盗・柴田も、お手上げとばかり話した。
 この時点で大矢は44回走られた中で29回を刺している。阻止率は.659だ。
 大矢自身は、
「タイミングさえ合ったら100パーセント刺せますよ。これからもドンドン刺して、最終的には阻止率を8割にしたい」
 と話していた。

 ただ、もともと強肩だったわけではない。早実入学時はむしろ弱肩で悩んでいた。それでも必死の努力でフォームの精度を上げ、さらには投手兼任だったこともあり、打撃投手を買って出ながら肩を鍛えた。
「僕は長嶋(茂雄)さんのような天分に恵まれているわけではないから、練習しなければついていけませんよ。盗塁を阻止する練習? ええ、やってますよ。目の色を変えてね」
 ちなみに投手としても東京大会でノーヒットノーランを達成している。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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