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背番号物語

【背番号物語】巨人「#11」エースナンバーの“本流”? 2021年はドラ1右腕・平内龍太の背に

 

50年代と90年代の最強エース


90年代に「11」を着けて巨人投手陣を牽引した斎藤


 今やプロ野球のエースナンバーとしての地位を確立している「18」。そのルーツとなったのは巨人という説が有力なことは紹介したが、その巨人でエースナンバーとなったのがV9時代だとしたら、プロ野球のエースナンバーという印象が普及したのは、さらに後の時代ということになる。一方、かなり早い段階で10番台の背番号は投手ナンバーという印象が定着しており、エースナンバーの概念は希薄でも、エースをイメージさせる背番号は存在した。それが「11」だ。

「十八番」(おはこ)という言葉があったことで日本人に浸透しやすかったともされる「18」の一方で、10番台の1番でもある「11」がエースの背番号とされるのも自然の流れだろう。その起源とされるのも巨人だ。そんなエースナンバーの“本流”といえる巨人の「11」だが、平成のプロ野球を知るファンが真っ先に思い浮かべるのは斎藤雅樹ではないか。すでに「18」がエースナンバーとして定着していた時代に、槙原寛己桑田真澄と“先発三本柱”を形成。「18」は桑田だったが、“90年代の最強エース”といわれたのは斎藤だ。MVPの90年まで2年連続で20勝。桑田もシーズン20勝には最後まで届かず、90年代の10年間では斎藤の126勝が最多だ。

巨人移籍2年目から「11」を背負った別所


 ただ、シーズンでも通算でも斎藤が届かない巨人の「11」が別所毅彦だ。南海で「12」のエースだった別所は大騒動の末に巨人へ。ペナルティーもあった移籍1年目の49年は「29」だったが、2リーグ制となった50年に「11」を背負うと、52年には33勝、防御率1.33の投手2冠。日本シリーズでも古巣の南海を下して、シーズンとシリーズでMVPをダブル受賞した。コーチ兼任となった61年オフに引退。指導者として62年も「11」を着け続けた。

 別所の通算310勝のうち、巨人の「11」で挙げたのは207勝。本格的なブレークイヤーとなった89年にはプロ野球記録の11連続完投勝利もあって“ミスター完投”の異名もあった斎藤だが、巨人へ移籍する前の別所が47年に残した47完投もプロ野球記録だ。2リーグ制となって間もない時代の野球少年、特に投手は誰もが別所の「11」にあこがれていたという。

 ただ、別所が移籍してくるまでは野手の背番号だった。プロ野球が始まる前年の35年は倉信雄で、36年から37年、欠番を挟んで復帰した41年は内堀保。ともに捕手で、内堀は剛球で鳴らしたスタルヒンが信頼したことでも知られる。戦後の46年は小松末広が着けるも一軍出場なく、すぐに古家武夫が継承、48年からは49年まで内藤博文が背負う内野手リレー。別所が「11」の投手としては第1号となる。

昭和と平成のリリーバー


巨人で左のリリーバーとして活躍した角も「11」を着けた


 1年の欠番を経て別所の後継者となったのが渡辺秀武。V9前半の巨人で長身からのアンダースローで印象を残した右腕で、70年にはノーヒットノーランを達成している。渡辺とのトレードで73年に後継者となった高橋善正(良昌)は東映(現在の日本ハム)で完全試合を経験した右腕だが、巨人ではリリーフが中心。ここからリリーバーが多くなり、高橋の引退で78年に継承したのが角三男だ。

 だが、巨人が大洋(現在のDeNA)から内野手で「11」のシピンを獲得したことで、すぐに”剥奪”されて「45」に。「12」を経てシピンの退団で「11」に戻った81年に8勝20セーブで4年ぶりリーグ優勝、日本一に貢献した。左のサイドハンドからの荒れる快速球で左打者の脅威となって、89年シーズン途中に日本ハムへ移籍するまで「11」で活躍し続けた。

現在はドラフト1位の平内が「11」を背負う


 斎藤の引退で1年の欠番を挟んで継承したのがリリーバーの久保裕也だ。10年にはリーグ最多の79試合で自己最多の32ホールドをマークするなど、セットアッパーとして機能。だが、久保の移籍からは安定感を欠く。16年にロッテから獲得したクルーズは二塁守備でもシピンの後継者だったが結果を残せず。18年はメジャーから復帰した上原浩治が代名詞の「19」を菅野智之が着けていたことから「11」に。19年に「42」から変更した山口俊も1年でメジャーへ移籍した。20年は欠番。そして21年、ドラフト1位で入団した右腕の平内龍太が背負う。

【巨人】主な背番号11の選手
別所毅彦(1950〜62)
渡辺秀武(1964〜72)
角三男(1978、81〜89)
斎藤雅樹(1990〜2001)
久保裕也(2003〜15)
平内龍太(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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