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背番号物語

【背番号物語】オリックス「#7」追憶の阪急ブレーブス。“世界の盗塁王”を象徴する韋駄天ナンバー

 

「7」1年目の快挙


阪急で2年目から背番号「7」になった福本


 2016年オフに糸井嘉男阪神へ移籍して以来、欠番が続いているオリックスの「7」。オリックスは球界再編の激動を経て05年から現在の“バファローズ”となったが、それまでの14年間は“ブルーウェーブ”で、これは本拠地が西宮から神戸へと移転するのを機に公募によって決まったものだった。その前は、チームがオリックスとなってからの2年だけと短い期間だったが、“ブレーブス”だった時期がある。これは前身の阪急が1リーグ時代の1947年から41年間もの長きにわたって名乗っていたニックネームだ。

 思えば阪急が歴史になってから、ずいぶんと時間が経ったものだが、20世紀、特に昭和のプロ野球を知る長いファンにとっては、オリックスの「7」は“阪急の「7」”と表現したほうが、いまも馴染みやすいかもしれない。最近のことより昔のことのほうが覚えているからではない。それだけ、阪急の「7」は輝ける背番号だった。

 阪急は67年に創設32年目の初優勝を飾り、そのまま黄金時代に突入していったが、そんな阪急にドラフト7位で69年に入団して、2年目から13年連続で盗塁王に輝いた福本豊の背番号だ。入団したときは「40」で、「7」となった72年に106盗塁で世界の頂点に。シーズン100盗塁を超えたのは現在でもプロ野球で唯一だ。福本の凄味は盗塁だけではない。打っても打率3割を超えること7度、シーズン最多安打は4度を数える安定感。1080グラムと重い“すりこぎバット”を振り抜いて残した通算初回先頭打者本塁打は43本、俊足も利した通算115三塁打も、ともにプロ野球の頂点に輝く。

 中堅守備も超一流。通算盗塁でも世界の頂点に駆け上がった83年に国民栄誉賞が贈られるという話があったときには「そんなもんもろたら立ちションもできなくなるわ」と固辞するなど、キャラクターも抜群だった。通算1000盗塁を超えたのも福本が唯一で、最終的には1065盗塁を残して阪急の終焉とともに現役を引退したが、このときも上田利治監督が最終戦のあいさつで「グラウンドを去る山田(久志)、残る福本」と言うところを口が滑って「グラウンドを去る山田、そして福本」を言ってしまい、まだ現役を続けるつもりだったものの「チームが変わるし、もうええわ」とサッパリと引退してしまったものだ。

 のちに山田が、「僕の『17』と福本さんの『7』は欠番にしてほしかった」と語ったときには「阪急の背番号は、みんな永久欠番やね」と福本。実績でもキャラクターでも、福本を超えることは相当、難しそうだ。ちなみに、72年に福本との“交換”で「7」から「40」になった平林二郎も韋駄天で、「7」の5年間は芽が出なかったが、「40」3年目の74年に自己最多の25盗塁をマークしている。

オリックスでは長続きせず


16年オフに糸井が移籍して以来、オリックスで「7」は欠番となっている


 オリックスとなってから福本の「7」は20世紀が終わるまでは欠番。92年に新人の田口壮が後継者となる可能性があったが、このときは田口が固辞している。2001年に横浜(現在のDeNA)から移籍してきた進藤達哉が着けると、04年にオリックス9年目で捕手の日高剛が1年だけ、05年からは近鉄から分配ドラフトで来た水口栄二が、08年からは阪神から移籍の濱中治が3年ずつ着けるなど、系譜は安定感を欠くようになる。1年の欠番を挟んで移籍2年目の赤田将吾が「4」から変更してきたが、すぐに移籍となり、このときのトレードで日本ハムでも「7」を着けていた糸井が後継者となった。福本と同様に長打力を兼ね備えた韋駄天の糸井も4年でFA移籍。これもオリックスの「7」が阪急のインパクトを塗り替えられない一因だろう。

 ただ、阪急でも1リーグ時代は1936年から49年までで9人の選手がリレーするなど入れ替わりが激しかった。2リーグ制となった50年に韋駄天で4年目の川合幸三が「20」から変更したことで安定。川合は福本と同じサウスポーで、「7」となってから6年連続で30盗塁を突破。通算58三塁打は福本が更新するまで球団記録だった。川合の引退で60年に継承したのが移籍1年目の衆樹資宏で、主にクリーンアップを担っている。衆樹の移籍で継承したのがプロ1年目の平林だ。

【オリックス】主な背番号7の選手
川合幸三(1950〜59)
衆樹資宏(1960〜66)
平林二郎(1967〜71)
福本豊(1972〜91)
糸井嘉男(2013〜16)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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