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背番号物語

【背番号物語】ソフトバンク「#28」若きサブマリンは正統なる後継者? 系譜には左腕とアンダースローが拮抗

 

勝率トップのサブマリン


ソフトバンクで背番号「28」を着ける高橋礼


 2019年に12勝を挙げて新人王に輝いたかと思えば、翌20年にはセットアッパーとして52試合に投げまくって23ホールドをマークしたソフトバンクの高橋礼が1年目の18年から背負っているのが「28」だ。先発でも救援でも結果を残しているサブマリン、なかなかのクセモノといえる。対戦する相手からすれば厄介な存在だが、こういう投手の存在で、俄然プロ野球は面白くなってくるものだ。

 一方、高橋が入団する前年まで「28」を背負っていた大隣憲司のイメージも残すファンも少なくないだろう。2年目の08年にチーム最多の11勝、12年には自己最多の12勝も、翌13年には黄色じん帯骨化症で離脱。手術を受けて復活を果たした姿でも印象に残る不屈の左腕だ。現役の高橋と前任者の大隣は対照的な投手にも思えるが、ホークスの「28」においては、両者とも正統なる後継者といえる存在。「28」が左腕の多いナンバーであることは、阪神で「28」だった江夏豊を紹介した際にも触れたが、ソフトバンクの前身でもある南海でも「28」は左腕ナンバーだったことが多い。そんな系譜に光るのがサブマリンの存在。少数派であることは間違いないが、左腕とサブマリンが存在感で拮抗している系譜といえる。

 ホークスに「28」が登場したのは戦中の42年で、右腕の長沼要男が初代。翌43年には21試合に登板して最下位に沈んだ南海を支え、戦後になってグレートリングとして再出発したチームでも「28」で復帰したが、これがラストイヤーに。1年の欠番を挟んで48年に2代目となった松本勇は捕手だった。物語が始まるのは3代目から。松本は50年オフに退団、53年に復帰したときには続く「29」を着けたが、このとき「28」を背負っていたのが右腕の大神武俊。奇しくも福岡県の出身で、南海のファーム的な存在だった南海土建から52年に入団した大神は1年目から8勝、松本が復帰した53年は19勝8敗でリーグトップの勝率.704をマークしてリーグ3連覇に貢献する。

 キレのあるシュートが武器の右のサブマリンで、翌54年にも14勝を挙げたが、その後は故障に苦しみ急失速。わずか5年でキャリアを終えたが、その後は福岡大で監督を務めるなど野球との関わりは途切れなかった。大神の引退で57年に後継者となった2年目の福田弘文(昌久)も右腕だったが、翌58年には外野手に転向。ところが62年には1試合でワンポイントリリーフするなどクセモノぶりを発揮した。そこから「28」には個性的な選手が続く。

左腕の勝率トップも


07年から17年まで背番号「28」を着けた大隣


 福田の移籍で63年に「28」を継承した新人の林俊彦が系譜で初の左腕。チーム5年ぶりの日本一イヤーとなった64年にシーズン49試合にリリーフを中心にフル回転すると、翌65年には開幕12連勝を含む17勝3敗、リーグトップの勝率.850でリーグ連覇に大きく貢献した。だが、これが投手としてのキャリアハイ。それでも71年には一塁手に転じて、78年までプレーを続けた。一貫して「28」だった林の16年は系譜で最長。もともとは左腕ながら登録はスイッチヒッターというクセモノでもあった。

ダイエーでリリーフ左腕として活躍した渡辺


 林の存在から「28」も野手のリレーに転じ、その引退で南海に1年だけ在籍した外野手の山下慶徳が着け、80年からは“左殺し”の異名を取った山本雅夫が81年に13本塁打。山本の移籍で84年は欠番となり、翌85年に新人の田口竜二が継承して左腕の背中に戻ったが、ダイエー元年の89年に右腕の原田賢治、翌90年は右腕の西村英嗣から左腕の杉本正へ、92年は左腕の新浦壽夫と系譜も落ち着かず。93年に新人ながら27歳となる渡辺正和が継承したことで左腕の背番号として安定感を取り戻した。渡辺は2000年に強力リリーフ陣の一角を担ってリーグ連覇に貢献。03年オフに引退するまでリリーバーとして第一線で投げ続けた。

 翌04年は欠番。ソフトバンク元年の05年は左腕のフェリシアーノが「28」のセットアッパーとして機能するも1年で退団して、1年の欠番を挟んで07年に後継者となったのが新人の大隣だった。大隣に限らず、不運が続く系譜なのも事実。だが、どんな形であれ、そこから再生を遂げた不屈の系譜であることも確かだ。

【ソフトバンク】主な背番号28の選手
大神武敏(1952〜56)
林俊彦(1963〜78)
渡辺正和(1993〜2003)
大隣憲司(2007〜2017)
高橋礼(2018〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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