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「その意識付け」オリックス・紅林弘太郎の1年目の言葉に見える成長理由

 

パンチ力ある打撃を見せてブレークの兆しを見せるオリックスの高卒2年目・紅林弘太郎


 ファームで連日スタメンに名を連ねたことからも、チームが寄せる期待の大きさは伝わっていた。目指す理想へ向けた課題、1年目に感じるプロのレベル──。それらを聞いたのは昨年7月のこと。それから、わずか8カ月で急激な成長を見せている。

 オリックスの高卒2年目・紅林弘太郎のことだ。

 入団時から体重が11キロ増で94キロに。186センチと身長も高く、大型遊撃手としてキャンプからレギュラー取りへアピール中の19歳。際立つのが打撃だ。2月9日の紅白戦で左翼席に叩き込むと、19日の紅白戦でも一発。対外試合となった23日のロッテ戦でも2打席連続の3ランと、19歳とは思えぬパンチ力を見せつけている。

 結果だけでなく、その内容がブレークへ期待を膨らませる。23日の練習試合での“2初”は、中堅から右方向と逆方向。体のサイズアップでの“力任せ”では決してない。

 1年目の昨季も「うまく言えないんですけど……」と言いながらも、考えて打席に立っていることは、言葉の端々から感じ取れていた。

 昨季は、打席に入ると一度オープン気味に構え、そこからフラットなスタンスに戻して構え、打席ではダウン気味の軌道でスイングの確認。狙いや意図を聞けば、こんな答えが返ってきた。

「内角が1球くると、意識してしまってすぐに体が開いてしまうんです。そうなると外角のスライダーとかにクルクル(バットが)回ってしまい……。小谷野(栄一二軍)打撃コーチに『視界を変えてみれば、見方も変わるよ』と言われ、一度体を開いて投手を見るようにしたんです。それで一度、オープン気味に開いてから構えているんです。内角の意識を消しつつ、外角に踏み込むためにも。ダウン気味のスイングでの確認も、小谷野コーチに『体の面(胸を向ける方向)を変えず』と言われて始めたこと。自分は、打ちにいくときに体だけ打ちにいって、バットが出てこないことが多くて。小谷野コーチに相談したら『面を変えずにいれば、勝手にバットが走っていく』とアドバイスしていただいた。ダウンスイングは、その意識付けです」

 素質は誰もが一級品のプロの世界。そこで、結果を残すには“思考力”も必要となり、それをいかに体現できるかが1つの勝負となる。だから、漠然と打席に立つだけなく、確かな意識を持ちながらファームで腕を磨いた。

 レベルアップへ。見て、聞いて、学び多くのことを吸収する。そうして、高卒2年目ながらブレークの兆しを見せているが、芯の強さもある。その1つが中学時代のエピソードだ。

 小学生時代は投手、捕手を務めていた紅林は、中学では遊撃を守りたいと強く思っていた。そこで、入団するか考えていた硬式チームに「ピッチャーか、キャッチャーをやってほしいと言われて……」と入団を見送る。軟式クラブチームでプレーし、遊撃手として成長を遂げると駿河総合高でも志願した。

「入学したときにすぐに自分で言ったんです。ショートをやらせてください、と」

 コーチからの助言に耳を傾けつつ、自分でもしっかりと考え、信念も持つ。開幕スタメンを期す“注目株”だが、シーズンが始まれば、すぐに結果は出ないかもしれない。それでも、向上心と探求心が、凡打も力に変えていく。まだ19歳。さらなる成長が楽しみなのは間違いない。

写真=BBM
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