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ヤクルトのドライチ右腕2人 スモールマウスでもビッグな野望?

 

今年のドライチ・木澤(左)と、昨年のドライチ・奥川(右)


 「週刊ベースボール3月15日号」の特集は、「2021 球界の主役108人」だ。表紙は、ヤクルト奥川恭伸を採用した。もちろん、中には奥川のインタビューも掲載。ヤクルト担当の私はインタビューも担当したのだが、奥川と話していくうちに、奥川と今年のドラフト1位右腕・木澤尚文が、少し似ていると思った。

 奥川は、単独インタビューではよく話してくれるのだが、なぜか大勢の記者で囲む取材になると、口数が少なくなる。具体的な数字や目標などは決して口にせず、おだやかな口調で「頑張りたいと思います」などふんわりとしたコメントをする。そう言われてしまうと、こちらとしてもツッコミにくい。おそらく、記事にされるとき“余計に”大風呂敷を広げてしまわれないための、元甲子園のスターなりの処世術なのだろう。ただ1対1で話して、奥川の発言がどういう意図でどのような真意なのか、一言ずつ細かく掘り下げていけば、その分しっかり詳しく話してくれるのだが。

 それでもやはり、具体的な数字は挙げない。何勝したいとか、防御率はどのくらいだとかは言わない。「自分の持ち味を発揮できれば」にとどめている。インタビュー中、数字を口にしない奥川にそのことをたずねると、「あまり大きなことを言って、良かったことがないので(笑)。今までも、大きなところを見るより、小さいところを見て、そこを目指してやってきたほうが、うまくやれてきたと思うので」と笑いながら理由を話してくれた。

 木澤も、入団会見の後の囲み取材で具体的な数字を挙げることはしなかった。その理由も同じく「何か大きな事を言って、良かったためしがないので」というもの。どうしても、『木澤、目標は2ケタ勝利』など、見出しになりそうな数字を挙げてもらいたいのが取材する側の本音だが、そう言われてしまえば、こちらは引き下がるしかない。

 奥川に聞いた。「本当は、心の底に何か野望があるのでは?」。奥川は「いやあ、でも……そんな、あんまり……なんていうんですかね」と苦笑い。ただ「僕はあんまり、口に出すタイプじゃないので」と、言葉を選びながらも、胸の内に秘める思いがあることをにおわせた。これは完全にこちらの憶測だが、「自分の持ち味を発揮できれば」のあとに「○勝できる」などの言葉が入るのではないか。普段は柔らかい物腰だが、マウンドでは闘志あふれるボールを投げる奥川は「グラウンドで優しい人なんていないですよ」とも言っていた。同様に好青年のお手本のようでありながら、強気の投球を見せる木澤も、もしかしたら内に秘めるものがあるのかもしれない。

 2人のドライチ右腕に、大きな期待がかかる2021年。シーズン終了後には、“不言実行”を成し遂げていてほしい。

文=依田真衣子 写真=BBM

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