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背番号物語

【背番号物語】ロッテ「#35」ドライチ左腕の系譜は打者の出世ナンバーも……初代は48歳1カ月の“右腕”?

 

打の鈴木、投の鈴木


新人時代から2年間、ロッテで背番号「35」を着けた鈴木


 ドラフト1位で入団した左腕の鈴木昭汰が2021年から背負う「35」。他のチームを含めて、「35」で現役を終える名選手が多い一方で、若手時代に「35」を与えられ、実績を残したことで若い背番号に変更する“出世ナンバー”という傾向があり、このナンバーを自らの象徴、永久欠番に匹敵するほどの存在にまで大きくした選手は皆無といっていい。一見すると地味な印象の背番号だが、鈴木昭汰の前途とともに、「35」の新しい物語も楽しみなところだ。あらためてロッテにおける「35」の系譜をさかのぼってみると、やはり出世ナンバー、それも投手ではなく、打者が若手時代に着けて活躍していた姿が印象的な系譜となっている。

 21世紀に生まれた若いファンにとっては特に、ロッテの「35」を背負った好打者といえば、20年から楽天でプレーしている鈴木大地を思い浮かべるのではないか。投打の役割こそ違えど、同じ鈴木。ドラフト3位で12年に入団して「35」を背負った鈴木大地は、1年目から一軍に定着して、2年目には全試合に出場。3年目には「7」へと“出世”していった。その後、「35」は1年の欠番を経て、捕手の寺嶋寛大と投手の渡邉啓太が3年ずつでリレーしたが、寺嶋寛大は一軍出場のないまま、渡邉啓太は通算6試合の登板で現役を引退している。近年は逆風が吹いている系譜であることは確かだ。

 ただ、チームが移転して追い風が吹いたのは鈴木大地の2年間のみ。川崎の最後、千葉の最初は1989年から96年まで着けた内野手の渡辺英昭だが、通算59試合の出場にとどまり、その引退で横浜(現在のDeNA)から引退してきたベテランの高橋眞裕(雅裕)も3年で引退。2000年に継承した“助っ投”のロバーツも1年で退団した。21世紀には01年にヤクルトから来た左腕の山崎貴弘が継承、プロ野球で初めて1球で初勝利を挙げる快挙も、翌02年には外野手に転向、その翌03年には投手に復帰したものの、オフに引退。そこから右腕の三島輝史が5年、左腕の坪井俊樹が3年でリレーしたが、ともに一軍登板なく現役を引退している。

 一方で、まだ本拠地が川崎にあった時代のロッテ、さらに系譜を東京、大毎、毎日とさかのぼっていくと、物語の色あいは濃くなっていく。20世紀、それも昭和を知る古いファンは、ロッテの「35」を背負った好打者といえば、鈴木大地ではない別の顔が思い浮かぶはずだ。

創設1年目の日本一監督も


巨人からロッテへ移籍して背番号「35」を着けた庄司


 すでに低迷期に入りつつある時代ではあったが、1980年にロッテの「35」を背負ったのが外野手の庄司智久だ。巨人では“多摩川のダイヤの原石”といわれながらも伸び悩んでいた庄司は、プロ9年目にロッテで「35」を背負うと、移籍1年目からリードオフマンに。81年には球宴にも出場したが、その後は原因不明の皮膚病もあり、徐々に出場機会を減らして88年オフに引退。名を上げながらも「35」のまま引退した貴重な存在でもある。

 一方、鈴木大地よりも早く若い背番号へ巣立ったのが弘田澄男だ。1年目の72年に「35」を背負い、2年目のキャンプで金田正一監督に見いだされて「3」に。これで「3」の江島巧が「4」に、「4」の岩崎忠義が「35」に変更された。弘田は74年のリーグ優勝、日本一の起爆剤となった外野手。江島も岩崎も外野手で、特に岩崎は以降も背番号の変更を繰り返したが、両者ともに以降も変わらずチームを支え続けた。

 岩崎が「7」に変更したことで75年に継承したのはドラフト1位で入団して2年目となる右腕の佐藤博正だが、1試合の登板で庄司に「35」を託すことになる。着けた期間で最長の庄司に1年だけ届かないのが大毎からロッテにかけて63年から70年まで捕手や内野手としてプレーした石田二宣だが、偵察メンバーとしての起用も多かった。

 だが、起源の毎日までさかのぼると、初代の「35」はチームを創設1年目から優勝、日本一に導いた湯浅禎夫監督が背負っていた栄光の背番号となる。プロ野球が2リーグ制となった50年に参加した毎日で、立場を変えながらも53年まで一貫して「35」を背負った湯浅だが、50年には消化試合の余興ながら48歳1カ月で登板した“右腕”でもあった。

【ロッテ】主な背番号35の選手
湯浅禎夫(1950〜53)
弘田澄男(1972〜73)
庄司智久(1980〜88)
鈴木大地(2012〜13)
鈴木昭汰(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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