週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

【MLB】ダルビッシュが在籍するパドレス指揮官はストライクゾーンにこだわり成功

 

現役時代は輝けなかったティングラー監督は、コーチを下積みしてパドレスの監督に。戦力が充実した中で、ストライクゾーンにこだわり優勝を目指す


 パドレスのジェイス・ティングラー監督は、2003年ブルージェイズにアマチュアドラフトで10巡指名されたが、173センチと小柄な中堅手でマイナーの3年間でわずか3本塁打と非力だった。

 そんな彼を05年のオフにルール5ドラフトで指名したのが、現在のパドレスのA.JプレラーGM。当時はレンジャーズのフロントで働いていた。「選手としてよく知っていたわけではない。3年間で70三振、177四球というありえない数字に、どんな選手なのだろうと興味を持ったから」と振り返る。

 06年はレンジャーズの2A、ハイAで、0本塁打ながら、25三振、44四球と持ち味発揮。打撃成績も打率.299、出塁率.395と良かった。しかしながら選手としてはこれ以上伸びしろがないと判断され、25歳で現役引退。26歳でレンジャーズ傘下の指導者になっている。もともと彼は両親がミズーリ州の高校でソフトボールやバスケットを長年指導し共に殿堂に入るほど成功を収めたコーチ一家の出なのだ。

 マイナーの監督になると、ドミニカ共和国のサマー・リーグでもアリゾナのルーキー・リーグでも3年連続チームを1位にした。レンジャーズ球団内で着々と出世。マイナーのフィールドコーディネイターになった後、15、16年はメジャーのコーチ。17、18年はアシスタントGMと、現場とフロントの両方で実績を積んだ。

 19年の10月、パドレスでなかなか結果を出せないでいたプレラーGMが、かつての指名選手を監督に抜てき、3年契約を結んだ。そして1年目で37勝23敗の好成績、同球団としては06年以来のポストシーズン進出を成し遂げている。

 パドレスにはマニー・マチャドフェルナンド・タティースなど才能ある選手がいるが、チームが一丸となって戦えないと強くはならない。ティングラー監督にはそれができた。2月17日のキャンプ初日、会見でストライクゾーンの戦いに勝つことがいかに重要かを力説していた。

「2−2のカウントになったときに、外角の球をしっかり見極めて3−2にすることがとても大事。フルカウントで3−2の球をしっかり叩くか、四球で歩けば良い。それが私たちのゴール」と力説する。

 19年、パドレスは出塁率.308でリーグ26位だったが、ティングラー監督の指導で20年は.333で8位と、一気にランクを上げた。監督は「このエリアについては、うちはもっと良くなれる。投手に関しても同じ。いかにカウントを有利に持っていくかだ」と説く。

 このオフ、パドレスはダルビッシュ有、ブレイク・スネルとオールスター投手を補強。だがチームとして強くなるカギはストライクゾーンを制する意識なのである。世界一のドジャースを脅かす存在になったが「紙の上では素晴らしいが、これからやることはたくさんある。去年成績が良かったからといって、今年は何の保証もない。昨季の60試合から今季は162試合に戻り、選手層の厚さも課題になる」と慎重だ。

 ダルビッシュとはレンジャーズ時代に現場で一緒だったが、5年ぶりに同じユニフォームを着る。「しっかりイニングを投げてくれるだけでなく、豊富な経験から若い投手にいい影響を与えてくれれば」と期待していた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング