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阪急・福本豊の足に1億円の保険金?/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

強気の男、大洋・坂井勝二


阪急・福本豊



 今回は『1972年8月7日号』。定価は100円。

 盗塁世界新記録を目指す阪急・福本豊の足に1億円の保険がかけられた。後半戦の4カ月、少しでも福本に事故があると、契約内容に順じて保証金が支払われるらしい。
 ロッテに入った陸上100メートルのレジェンド、飯島秀雄が5000万円の保険に入ったことがあったというが、今回が球界最大であることは間違いない。

 蛇足になるが、まだ保険がなんなのか分からない時代にこの話を知り、「福本さんは1億円も出して保険に入ったのか、すごいな」と思った記憶がある。実際には掛け金25万円(月額?)で、球団が支払っていた。

 福本は「球団の温かい配慮に感謝している。思い切って走れる。なんとか105個の世界記録をつくってみたい」と話していた。
 球団フロントは、
「後半戦の焦点が福本の盗塁にかかっていることを思うと、ケガなどの障害があっても心置きなく走れる状況をつくるべきで、いわば精神安定剤のようなものです」
 と言っているが、もちろん、独走態勢ながらまったく球場の観客が増えぬ阪急の話題づくりでもあった。
 満額が出るのは、どんな状態になったときだったのか。

 大洋・坂井勝二のピッチングのスピードについての記事もあった。言わずもがなだが、球速ではない。捕っては投げの超クイックモーションだ。

 坂井は黒い霧事件のとき、賭博常習者との交際が発覚し、出場停止処分になった。ただ、坂井は八百長行為については完全否定するも、声高に主張するのではなく、「疑われたのは仕方ない。ただ、やってないよ」という達観したスタンスだった。
 二軍落ちでもまったく文句も言わず、いつも黙々と投げていたという。

 この男、腹が据わっている。アンダースローで球は速くないが、インコースをぐいぐい突き、死球を出しても表情を変えない。よく速球派の真っすぐ勝負を強気というが、実は、こういう投手のほうがずっと強いハートがある。
 ただ、顔色が変わったことがある。この年の序盤戦、巨人長嶋茂雄に死球を出したとき、
「おい、警察署がお前を呼んでるぞ」
 という巨人ベンチからのヤジを聞いたときだ。別に言い返したわけじゃない。ただ、顔が青白くなっただけだ。

 もともとテンポのいい投手だったが、この年からさらに早くなり、ほぼクイック。捕手から球を受け取ると、そのままモーションに入った。走者がいないときはすべてノーサインだったという。
 打者の対策を練って、盛んに打席を外すようになったが、逆に意識し過ぎで坂井の術中にはまっているようでもあった。
「今年はつきもある。シピンとボイヤーがよく守ってくれるのが大きい。僕は打たせて取るタイプですからね」
 と坂井は淡々と語っていた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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